糖尿病の診断基準
健康診断で「血糖値が高い」「HbA1cが6.5%だった」と言われると、 すぐに糖尿病なのか、不安になる方は少なくありません。
糖尿病は、ひとつの数字だけを見て機械的に診断する病気ではありません。 血糖値、HbA1c、症状、検査を受けた条件、過去の数値の推移などを組み合わせて判断します。
このページでは、日本糖尿病学会の診断基準をもとに、 糖尿病型となる数値、確定診断までの流れ、境界型、 75g経口ブドウ糖負荷試験、HbA1cが実際の血糖状態とずれる場合まで、 糖尿病専門医が分かりやすく解説します。
空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、75gOGTT 2時間値200mg/dL以上は糖尿病型です。
HbA1c 6.5%以上も糖尿病型ですが、HbA1cだけでは確定診断できない場合があります。
同じ採血で血糖値とHbA1cがともに糖尿病型なら、1回の検査で診断できます。
一方だけが糖尿病型の場合は、原則として別の日に再検査します。
家庭用血糖測定器、CGM、尿糖だけでは糖尿病を確定診断できません。
糖尿病型となる4つの検査基準
次のいずれかを満たす場合、検査結果は「糖尿病型」と判定されます。 ただし、「糖尿病型」という検査上の判定と、 「糖尿病」という確定診断は、必ずしも同じではありません。
一般に10時間以上食事をとらずに測定した、静脈血漿の血糖値です。
75gのブドウ糖を飲み、2時間後に測定した静脈血漿の血糖値です。
食事をとった時刻に関係なく測定した、静脈血漿の血糖値です。
過去1〜2か月程度の平均的な血糖状態を反映する指標です。
確定診断には、医療機関で静脈採血を行って測定した血漿血糖値を用います。
家庭用血糖測定器、リブレなどのCGM、尿糖の結果は参考になりますが、 それだけで糖尿病を確定診断することはできません。
糖尿病はどのように確定診断しますか?
糖尿病の診断では、一時的な血糖上昇ではなく、 慢性的な高血糖が続いていることを確認します。
可能な限り、同じ採血で血糖値とHbA1cの両方を測定します。
血糖値のいずれかとHbA1cが同じ日にともに糖尿病型なら、 1回の検査で糖尿病と診断できます。
血糖値またはHbA1cの一方のみが糖尿病型の場合は、 原則として別の日に再検査します。
HbA1cだけを繰り返して確定することはできず、 少なくとも1回は血糖値による確認が必要です。
血糖値が糖尿病型で、典型的な症状や確実な糖尿病網膜症がある場合は、 1回の検査で診断できることがあります。
1回の検査で診断できる場合
同じ日に測定した血糖値とHbA1cが、ともに糖尿病型を満たしている場合です。
口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状があり、血糖値が糖尿病型の場合です。
確実な糖尿病網膜症が確認されている場合は、 慢性高血糖の存在を示す重要な所見となります。
現在の数値が治療によって低下していても、 過去に糖尿病と診断された確かな記録があれば、 糖尿病として継続的に対応します。
HbA1cが6.5%以上なら、必ず糖尿病ですか?
HbA1c 6.5%以上は「糖尿病型」ですが、 HbA1cだけでは確定診断できない場合があります。
HbA1cは非常に有用な検査である一方、 赤血球の寿命、貧血、腎疾患、出血、輸血などの影響を受けることがあるためです。
鉄欠乏状態
血糖が急速に改善した直後
一部の異常ヘモグロビン
測定法や検体条件の影響
急速に発症・悪化した糖尿病
溶血、出血後、輸血後
透析や腎性貧血の治療中
肝硬変など赤血球寿命へ影響する状態
急速に高血糖が進んだ場合、 HbA1cがまだ十分に上がっていないことがあります。
強い口渇、多尿、急な体重減少、吐き気、腹痛、 強いだるさ、意識がぼんやりするなどがある場合は、 早めに医療機関を受診してください。
正常型・境界型・糖尿病型の違い
空腹時血糖値と75gOGTTの2時間値を組み合わせて、 正常型・境界型・糖尿病型を判定します。
空腹時血糖値110mg/dL未満
かつ
75gOGTT 2時間値140mg/dL未満
正常型にも糖尿病型にも当てはまらない状態です。
代表例は、空腹時血糖110〜125mg/dL、 またはOGTT 2時間値140〜199mg/dLです。
空腹時血糖126mg/dL以上、 またはOGTT 2時間値200mg/dL以上です。
随時血糖200mg/dL以上も糖尿病型です。
正常型の範囲内ですが、 糖尿病の家族歴、肥満、高血圧、脂質異常症などがある方では、 75gOGTTなどの追加評価を検討する場合があります。
糖尿病予備群については、以下のページもご覧ください。
75g経口ブドウ糖負荷試験とは
75g経口ブドウ糖負荷試験、いわゆる75gOGTTは、 一定量のブドウ糖を飲み、時間ごとの血糖値を調べる検査です。
空腹時の採血だけでは見つかりにくい食後高血糖や、 境界型を詳しく評価できます。
75gOGTTが強く推奨される主な場合
空腹時血糖値が110〜125mg/dL
随時血糖値が140〜199mg/dL
HbA1cが6.0〜6.4%で、明らかな糖尿病症状がない
75gOGTTを行うことが望ましい主な場合
空腹時血糖値が100〜109mg/dL
HbA1cが5.6〜5.9%
糖尿病の家族歴が濃い
肥満、高血圧、脂質異常症などがある
過去に妊娠糖尿病を指摘されたことがある
75gOGTTを受ける前の注意点
検査前に極端な糖質制限をすると、 本来の糖代謝を正確に評価できない場合があります。
一般には検査前3日以上、十分な糖質を含む通常の食事をとり、 前夜から10〜14時間絶食して検査します。 実際の準備は医療機関からの指示に従ってください。
健康診断で血糖値やHbA1cを指摘されたら
健康診断に書かれている「要再検査」「要精密検査」は、 糖尿病の確定診断そのものではありません。
反対に「軽度異常」と記載されていても、 食後高血糖、数値の上昇傾向、家族歴などから、 詳しい検査が必要なことがあります。
今回だけでなく、可能であれば過去2〜3年分以上の結果を確認します。
空腹時だったか、食事や甘い飲み物をとった後だったかを確認します。
血糖、HbA1c、尿検査、腎機能、肝機能、脂質、 必要に応じて75gOGTTなどを検討します。
早めの受診を考えたい目安
HbA1cが6.5%以上
空腹時血糖が126mg/dL以上
前年よりHbA1cや血糖値が明らかに上昇している
口渇、多飲、多尿、体重減少、強いだるさがある
妊娠中、または妊娠を希望している
ステロイド治療中である
膵臓疾患や内分泌疾患がある
糖尿病の診断で数値以外に確認すること
口渇、多飲、多尿、体重減少、倦怠感、 感染症を繰り返していないかなどを確認します。
糖尿病の家族歴、若い頃からの体重変化、 最近の急な体重減少などを確認します。
ステロイド薬、膵疾患、甲状腺、副腎、下垂体などの病気が 血糖値へ影響することがあります。
2型糖尿病だけでなく、1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病、 その他の原因による糖尿病を検討します。
検査値に異常があったとき、 生活習慣だけを原因と決めつけることはしません。
年齢、家族歴、体重変化、使用している薬、 膵臓やホルモンの病気まで確認し、 その方に必要な検査と今後の方針をご説明します。
受診時にお持ちいただきたいもの
健康保険証またはマイナンバーカード
健康診断や人間ドックの結果
可能であれば過去2〜3年分以上の検査結果
お薬手帳
紹介状がある場合は紹介状
家庭で血糖測定をしている場合は測定記録
CGMを使用している場合は測定データ
すべて揃っていなくても受診できます。 お手元にあるものをお持ちください。
糖尿病の診断基準についてよくある質問
Q1.HbA1cが6.5%でした。糖尿病ですか?
HbA1c 6.5%以上は糖尿病型です。 ただし、HbA1cだけでは確定診断できません。 同じ日に血糖値も糖尿病型なら診断できますが、 そうでなければ血糖値を含む再検査が必要です。
Q2.空腹時血糖が126mg/dLでした。1回で糖尿病と決まりますか?
126mg/dL以上は糖尿病型です。 同じ採血でHbA1cも6.5%以上なら1回で診断できます。 HbA1cが基準未満の場合は、 典型症状などがなければ原則として再検査します。
Q3.随時血糖200mg/dL以上は食後でも同じですか?
食事時間に関係なく、 静脈血漿の随時血糖200mg/dL以上は糖尿病型です。 確定診断にはHbA1c、再検査、症状などを組み合わせます。
Q4.HbA1cが正常なら糖尿病ではありませんか?
必ずしもそうではありません。 急速に発症した糖尿病ではHbA1cがまだ上がっていないことがあります。 出血、溶血、輸血、透析などで実際より低く出る場合もあります。
Q5.家庭用血糖測定器で200mg/dLでした。糖尿病ですか?
家庭用測定器の値は参考になりますが、 確定診断には使用しません。 医療機関で静脈採血による血糖値とHbA1cを確認してください。
Q6.リブレなどのCGMで高血糖が出たら診断できますか?
CGMは血糖変動を知るうえで有用ですが、 糖尿病の確定診断には使いません。 診断には静脈血漿の血糖値と標準化されたHbA1c測定を用います。
Q7.尿糖が陽性なら糖尿病ですか?
尿糖だけでは診断できません。 糖尿病でなくても尿糖が出る体質や、 SGLT2阻害薬の影響で尿糖が陽性になることがあります。
Q8.境界型と糖尿病予備群は同じですか?
日常的には近い意味で使われますが、厳密には同じではありません。 境界型は、空腹時血糖と75gOGTT 2時間値を組み合わせて判定する分類です。
Q9.HbA1c 5.6〜5.9%でも検査が必要ですか?
糖尿病の家族歴、肥満、高血圧、脂質異常症、 過去の妊娠糖尿病などがある場合は、 75gOGTTを含む詳しい評価を検討します。
Q10.HbA1c 6.0〜6.4%なら薬が必要ですか?
HbA1cだけで薬の必要性は決まりません。 まず糖尿病かどうかを確認し、 血糖値、年齢、合併症、体重、生活状況などから個別に判断します。
Q11.75gOGTTは全員に必要ですか?
全員には必要ありません。 空腹時血糖やHbA1cだけでは判断しにくい方、 境界型が疑われる方、糖尿病リスクが高い方などに検討します。
Q12.検査前に食事を抜けばHbA1cは下がりますか?
HbA1cは直前の1食ではほとんど変わりません。 一方、空腹時血糖を測る場合は絶食条件が重要です。
Q13.風邪や発熱で血糖が高くなることはありますか?
あります。 感染症、強いストレス、脱水、ステロイド薬などで 一時的に血糖が上がる場合があります。 回復後の再検査が重要です。
Q14.妊娠中も同じ診断基準ですか?
妊娠糖尿病には妊娠中専用の診断基準があります。 本ページの一般的な糖尿病診断基準とは別に評価します。
Q15.子どもや若い人も同じ基準ですか?
基本となる糖尿病型の数値は共通です。 ただし若年者では1型糖尿病などを念頭に、 症状や発症速度、自己抗体、インスリン分泌などを早急に評価することがあります。
Q16.糖尿病と診断されたら、必ず薬を始めますか?
必ずしも全員が直ちに薬を始めるわけではありません。 高血糖の程度、症状、糖尿病の型、合併症、生活背景などによって異なります。
Q17.診断日に結果は分かりますか?
玉寄クリニックでは血糖値とHbA1cを院内で迅速測定できます。 ただし、確定診断には過去の結果、症状、追加採血、 別の日の再検査などが必要な場合があります。
Q18.健診結果は何年分持参すればよいですか?
可能であれば2〜3年分以上をお持ちください。 単独の数値だけでなく、血糖値やHbA1cの推移が 診断や今後の方針に役立ちます。
健診で血糖値・HbA1cを指摘された方へ
玉寄クリニックは、東京都中央区日本橋人形町にある、 内科・糖尿病内科・内分泌内科のクリニックです。
糖尿病専門医2名が、健診異常、糖尿病予備群、 糖尿病の診断、治療方針について診療します。 血糖値とHbA1cは院内で迅速測定できます。
人形町駅・水天宮前駅から徒歩1分で、 浜町、日本橋、茅場町、小伝馬町方面からも通院しやすい立地です。
専門診療の初回相談は電話予約制です。 健診結果や過去の検査結果をお持ちください。
生活習慣病で通院中の方の再診は、 原則として予約なしで受診できます。
03-3661-5555へ電話する
人形町駅・水天宮前駅から徒歩1分
東京都中央区日本橋人形町1丁目12-11
リガーレ日本橋人形町105
関連ページ
参考資料
・日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』第1章「糖尿病診断の指針」
・日本糖尿病学会『糖尿病治療ガイド2024』
・American Diabetes Association, Standards of Care in Diabetes—2026
本ページは一般的な医療情報を提供するものであり、 個別の診断を目的とするものではありません。 検査結果や症状については医療機関でご相談ください。
執筆・監修
玉寄クリニック 副院長
玉寄 皓大
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
日本内科学会認定 内科専門医
東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科で診療経験
聖路加国際病院 内分泌代謝科で診療経験
本記事は、玉寄クリニック副院長 玉寄皓大が、 医学的内容を執筆・監修しています。
東京都中央区日本橋人形町
人形町駅・水天宮前駅から徒歩1分

「HbA1cが6.5%だったから、その場ですぐ糖尿病」とは限りません。
一方で、症状がなくても糖尿病であることは珍しくありません。 検査条件、過去の数値の推移、貧血、腎機能、体重変化なども含めて 総合的に判断することが大切です。