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【代謝専門医が解説】肥満症治療薬ウゴービ|保険適用条件・効果・副作用を徹底解説

[2025.09.15]

美容目的ではなく、医学的根拠に基づく“医療としての減量”を!

1. ウゴービとは

ウゴービ注(Wegovy)は2024年に日本で承認された肥満症専用の注射薬です。有効成分は「セマグルチド」。もともと糖尿病治療薬(オゼンピック)として使われてきましたが、肥満症そのものを治療する薬として正式に認められた唯一のGLP-1受容体作動薬です。週1回、自分でお腹や太ももに注射。脳と消化管に作用して食欲を抑え、少ない量でも満足できるようにします。

2. ウゴービで痩せる理由

2-1 作用のしくみ

ウゴービは体内ホルモン「GLP-1」を強めて次のように働きます。

  • 脳に作用:空腹感を減らし、満腹感を持続
  • 胃の動きをゆっくりに:食べ過ぎを防ぐ
  • 膵臓に作用:必要な時だけ血糖を下げるホルモン(インスリン)を分泌

これにより、自然なカロリー制限が可能になり、体重が減少します。

 

 

2-2 臨床試験で確認された効果

国際的な大規模研究「STEP試験」では、

  • 対象:BMI27以上(肥満症基準)で2型糖尿病がない成人
  • 方法:生活習慣改善(食事・運動)+週1回ウゴービ2.4mg注射
  • 期間:68週間

この条件で、体重が平均10〜15%減少(例:体重100kg→約85〜90kg)し、ウエストも平均10cm以上減少しました。糖尿病がある人を対象にした試験でも同等の効果が確認されています。

 

2-3 主な副作用

ウゴービの副作用は主に胃腸症状です。

  • よくあるもの:吐き気、下痢、便秘、嘔吐(治療初期に多く、数週間で軽快しやすい)
  • まれな重いもの:胆石・胆嚢炎、膵炎、低血糖(単独使用では少ない)

必ず内分泌代謝専門医や糖尿病専門医の管理下で使用し、症状が強い場合は早めに相談することが重要です。

 

3. 保険診療で使うための条件

ウゴービは「誰でも使える痩せ薬」ではなく、医学的に肥満症と診断された方が対象です。 

 

保険適用の基本条件
  • 6か月以上の食事・運動療法でも改善が不十分
  • かつ以下のいずれか
    • BMI27以上で、下記「肥満に関連する健康障害」を2つ以上合併
    • BMI35以上

 

【肥満に関連する健康障害】

  1. 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
  2. 脂質異常症
  3. 高血圧
  4. 高尿酸血症・痛風
  5. 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
  6. 脳梗塞・脳血栓症・一過性脳虚血発作
  7. 脂肪肝(NAFLD)
  8. 月経異常・不妊
  9. 睡眠時無呼吸症候群
  10. 運動器疾患(変形性膝関節症・股関節症・脊椎症など)
  11. 肥満関連腎臓病

 

4. 保険診療を行える施設基準

ウゴービを保険で処方できる医療機関には厳しい条件があります。

  1. 日本糖尿病学会・日本内分泌学会・日本循環器学会いずれかの専門医が在籍
  2. 上記学会の教育認定施設(専門医育成医療機関)である
  3. 管理栄養士を含む多職種チームによる栄養・運動指導体制が整っている

 

5. 保険診療が進みにくい現状

ウゴービは保険適用が認められていても、実際に保険診療を受けられる人は極めて少ないのが現状です。理由は次の通りです。

  1. 投与できる施設が限定的(大学病院や総合病院など教育認定施設のみ)
  2. 薬物療法は最低"半年間"の栄養相談後から開始可能
  3. 一度中止した場合は再び半年の栄養相談が必要
  4. 投与期間も限定的

 

社会保障費の増大を考えると、保険診療の条件が緩和される見通しは当面明るくありません。そのため、自費診療として専門医が安全に提供する形が現実的な選択肢になりつつあります。

 

6. ウゴービとマンジャロの違い

 

ウゴービ

マンジャロ

用途

肥満症治療薬(糖尿病がなくても可)

糖尿病治療薬

日本での承認

肥満症に正式承認

肥満症は未承認

学会の見解

正しい適応で使用

美容目的の適応外使用は学会が警告

 

日本糖尿病学会の公式見解

日本糖尿病学会は2023年4月に、「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」を発表し、次のように警告しています。

  • 美容や痩身・ダイエット目的での不適切な宣伝・処方は問題
  • 薬は承認された適応範囲でのみ使用すべき
  • 不適切な使用は糖尿病専門医への信頼を損なう

 

👉 つまり糖尿病のない方へのマンジャロのダイエット目的使用は認められていません。糖尿病がない方の肥満症治療薬として正式に承認されているのはウゴービだけです。

 

7. 医療としての減量を選ぶ理由

肥満症は見た目ではなく「病気」です。美容目的の自己流ダイエットや適応外処方は、健康リスクが大きく危険です。

 

ウゴービは、生活習慣病や心血管リスクの改善まで視野に入れた「医療としての減量」を可能にします。糖尿病専門医・内分泌代謝専門医の管理のもと、安全で効果的に治療を行いましょう。

 

まとめ

  • ウゴービは日本初の肥満症専用治療薬で糖尿病がなくても使用可能
  • GLP-1作用により食欲を抑えて体重を減らす理由が明確
  • 臨床試験ではBMI27以上の肥満症患者を対象に平均10〜15%の体重減少を確認
  • 副作用は主に胃腸症状だが、専門医の管理で安全に使用できる
  • 保険適用にはBMI基準・健康障害・施設基準が必要で、現状はハードルが高い
  • 美容業界で流行りのマンジャロは糖尿病薬であり肥満症薬ではない
  • 美容目的ではなく「医療としての減量」こそが健康を守る本当の選択肢

 

著者紹介:

人形町 水天宮 内科クリニック 医師

玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)

  • 日本内科学会認定 内科専門医
  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
  • 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

東大病院・聖路加国際病院で糖尿病、脂質異常症、高血圧症、肥満症の専門診療に従事。聖路加国際病院では「肥満外来」を担当した。現在は東京都中央区・日本橋で糖尿病、脂質異常症、高血圧症、肥満症の早期発見・治療を通じて、将来の冠動脈疾患や脳卒中を防ぐ活動を行っています。

 

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