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【脂質異常症は認知症にも関係する?】|The Lancetの2024年委員会報告で注目された中年期のLDLコレステロールを内分泌代謝専門医が解説

[2026.03.22]

脂質異常症と認知症の関係を、The Lancetの2024年委員会報告から読み解きます

外来をしていると、血糖や血圧は気にしていても、LDLコレステロールだけは「まだ困っていないから」と後回しにされる方が少なくありません。

 

脂質異常症というと、多くの方は「心筋梗塞や脳梗塞の原因になるもの」というイメージを持っていると思います。


それはもちろん正しいです。


ただ最近は、それだけでは済まなくなってきました。認知症との関係が、これまで以上にはっきり意識されるようになってきたからです。

 

2024年に医学誌 The Lancet に掲載された委員会報告“Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission”では、認知症の修正可能なリスク因子が14項目に整理され、全体の約45%は予防または発症を遅らせうる可能性があるとされました。

 

今回リスクに新たに加わったのが、中年期の高LDLコレステロールと高齢期の未治療の視力障害です。しかも中年期の高LDLコレステロールは、認知症に関わる因子として約7%と推計され、難聴と並ぶ大きな項目として扱われました。委員会は、40歳前後からの中年期に高LDLコレステロールを見つけて治療することを提言のひとつに挙げています。

 

The Lancetの2024年委員会報告でわかったこと

  • 2024年の The Lancet 委員会報告では、中年期の高LDLコレステロールが認知症の修正可能なリスク因子に新たに追加された。
  • 中年期では、難聴7%と高LDLコレステロール7%が大きい。
  • LDLコレステロールが約39 mg/dL上がるごとに、認知症発症率上昇が報告されている。
  • 脂質異常症の管理は、心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、将来の認知機能という観点からも大事になってきている。

 

 

まず全体像を見てみましょう。今回の委員会報告では、中年期のリスクの中で、高LDLコレステロールは難聴と並んで大きな項目として位置づけられています。

 

表:中年期に注目した認知症の修正可能な危険因子(The Lancet 2024年委員会報告)

項目 寄与割合の目安
難聴 7%
高LDLコレステロール 7%
うつ 3%
外傷性脳損傷 3%
身体不活動 2%
糖尿病 2%
喫煙 2%
高血圧 2%
肥満 1%
過度の飲酒 1%

 

表の説明

今回の委員会報告では、認知症に関わる修正可能な危険因子がライフステージごとに整理されています。中年期では、難聴と高LDLコレステロールがともに7%と大きく示されています。

 

認知症のリスク因子はほかにもあります。高血圧、糖尿病、喫煙、運動不足、社会的孤立などです。

 

ただ、私はコレステロールを専門に診ている内分泌代謝専門医なので、この記事ではLDLコレステロールに絞ってお話しします。

 

LDLコレステロールは、健康診断で必ず見つけることができます。その一方で症状がないために後回しにされやすい。そこが、LDLコレステロールの厄介なところです。

 

Q. LDLコレステロールと認知症は、本当に関係あるのですか?

はい。関係があると考えられるだけのデータが、かなりそろってきました。今回の委員会報告では、中年期の高LDLコレステロールが新たに認知症の修正可能なリスク因子として加えられました。さらに、65歳未満を含む大規模な解析では、LDLコレステロールが1 mmol/L、つまり約39 mg/dL上がるごとに、認知症の発症率が8%上がると報告されています。

 

ここで大事なのは、


「LDLが少し高かったら、すぐ認知症になる」


という話ではない、ということです。

 

そうではなく、中年期からLDLが高い状態が長く続くことが、将来の認知症リスクと関係してくる、という理解が大事です。

 

Q. なぜ「高齢期」ではなく「中年期」が大事なのですか?

認知症は、ある日突然始まる病気ではありません。症状が出るずっと前から、脳の中で少しずつ変化が進んでいくと考えられています。だから、もの忘れが目立ってから対策を始めるより、もっと前の時期に手を打つほうが理にかなっています。今回の委員会報告では、特に40歳前後からの中年期が重要な時期として意識されています。健康診断でLDLコレステロールが高いと言われても、「まだ困っていないから」と放置してしまう方は少なくありません。しかし認知症という視点で見ると、まさにその「何年も放置すること」が問題になります。

 

Q. 「7%」という数字は、どういう意味ですか?

7%というのは、治療した人の認知症リスクが一律7%下がる、という意味ではありません。そうではなく、社会全体で見たときに、中年期の高LDLコレステロールが認知症の約7%に関わっている可能性がある、という意味です。社会全体で見るとかなり大きい数字であり、認知症予防という話の中で、LDLコレステロールはかなり重要なことがわかります。

 

Q. LDLが高いと、なぜ認知症と関係するのですか?

ここは、まず血管の話として考えるとわかりやすいです。LDLコレステロールが高い状態が続くと、血管の壁にたまりやすくなります。それが「動脈硬化」です。動脈硬化が進むと、血管が狭くなったり、詰まりやすくなったりします。脳の血管でそれが起これば、脳梗塞につながります。そして脳梗塞は、血管性認知症の原因になります。

 

もうひとつは、脳そのものへの影響です。今回の委員会報告では、脳内コレステロールがアミロイドβやタウの沈着に関わる可能性にも触れています。つまり、高LDLコレステロールは、血管を傷めるだけでなく、アルツハイマー病のような脳の変化にも関係しているかもしれない、ということです。

 

Q. スタチンでLDLを下げれば、認知症予防になるのですか?

意味はあります。ただし、「スタチンを飲めば、認知症を必ず防げる」とまでは言えません。今回の委員会報告では、スタチンを使っている人は使っていない人に比べて、全認知症リスク低下と関連し、オッズ比は0.80だったと整理されています。アルツハイマー病についても低下との関連が示されています。さらに委員会の提言として、中年期から高LDLコレステロールを見つけて治療することが挙げられています。つまり、少なくとも必要な人が中年期からLDLコレステロールをきちんと管理することには意味がある。ここはかなりはっきりと言えるところです。

 

Q. 実際の外来では、どんな印象がありますか?

冒頭で述べたように、血糖や血圧は気にしていても、LDLコレステロールは後回しにしている40-50代の方が少なくありません。

 

そのまま放置してしまうと、いざ困ったときには時すでに遅しということがあります。

 

心筋梗塞も脳梗塞も、認知症も、ある程度時間をかけて土台ができていくからです。私自身、最近はLDLコレステロールの説明をするとき、心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、認知症の話もするようになりました。今回の委員会報告は、その説明にかなり強い根拠を与えてくれたと感じています。

 

Q. 認知症予防のために、まず何を見直せばいいですか?

まずは、健康診断でLDLコレステロール高値を何年も指摘されていないかを確認していただきたいです。今回の委員会報告では、別の大規模研究として、LDLコレステロールが3 mmol/L超、つまり約116 mg/dL超で認知症リスク上昇がみられたことも紹介されています。

 

一般的には、LDLコレステロールが120 mg/dL以上で境界域高LDLコレステロール血症、140 mg/dL以上で高LDLコレステロール血症、として扱われることが多いです。認知症の観点からみても、「コレステロールが高いですね」と言われた時点で放置しないほうがよい数字のことが少なくありません。特に40代、50代で、糖尿病、高血圧、喫煙、家族歴などほかのリスクが重なる方は、一度きちんと整理したほうがよいと思います。

 

LDLコレステロールは、「高いからすぐ薬」
「少し高いから放置」と単純に決められるものではありません。


年齢、体質、家族歴、合併症、動脈硬化リスクを見ながら、食事や運動でいけるのか、薬が必要なのかを検討する必要があります。

 

Q. ほかの認知症リスクは気にしなくてよいのですか?

もちろん、そんなことはありません。今回の委員会報告では、脂質異常症のほかにも、難聴、うつ、外傷性脳損傷、身体不活動、糖尿病、喫煙、高血圧、肥満、過度の飲酒、社会的孤立、大気汚染、視力障害などが挙げられています。ただ、全部を一度に意識するのは大変です。その中で、健康診断で見つけやすく、治療の方針も立てやすいのがLDLコレステロールです。私はコレステロールの専門医として、まずここを押さえることに意味があると思っています。

 

Q. 内分泌代謝専門医として、どう考えていますか?

これまでLDLコレステロールの治療は、「心筋梗塞を防ぐため」「脳梗塞を防ぐため」
という説明が中心でした。それは今でも正しいです。しかし、そこに今はもうひとつ視点が加わりました。将来の認知機能を守るためです。

 

私は、脂質異常症の治療を「数字を下げる作業」ではなく、将来の血管と脳に対して前倒しで手を打つこととして考えています。

 

健診でLDLコレステロール高値を指摘された方へ

ここまで読んで、「自分も放置しないほうがいいのかもしれない」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。脂質異常症は、自覚症状がないまま進みやすい病気です。だからこそ、健診でLDLコレステロール高値を指摘されたときこそ、一度きちんと整理する意味があります。健診結果をどう読むか、本当に治療が必要か、生活習慣でどこまで改善できるのかを、一緒に考えることが大切です。

 

玉寄クリニックでは、目的に合わせて次の3つの形でご相談いただけます。当院の脂質異常症外来の詳細はこちらから。

 

① 初診(健診でコレステロール高値を指摘された方)

健康診断・人間ドックの結果をお持ちください。数値の意味と背景を一緒に整理します。

 

② 転院(当院での継続治療をご希望の方)

他院で治療中の方で、当院へ転院して継続治療をご希望の場合は受診可能です。紹介状や直近の採血結果があるとスムーズです。

 

③ セカンドオピニオン(今の主治医は変えずに相談したい方)

「治療方針が腑に落ちない」「薬や検査について整理したい」など、当院にも一度相談したい方は、自費診療のセカンドオピニオンとして対応可能です。

 

いずれの初診(①〜③)も、健診結果を確認し、背景まで整理するため、お電話による予約制となります。

 

電話:03-3661-5555

受付:9:00–12:20/14:30–17:50

住所:東京都中央区日本橋人形町1丁目12−11

 

 

▶︎ 参考文献:

Livingston G, Huntley J, Liu KY, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. The Lancet. 2024;404(10452):572-628.

 

▶︎ 人形町・水天宮前で内科をお探しの方へ:一般内科(総合内科)のご案内はこちら

 

▶︎ 脂質異常症ブログシリーズ

 

 

▶︎ 著者紹介: 

人形町 水天宮 内科クリニック 医師

玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)

  • 日本内科学会認定 内科専門医
  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
  • 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

東大病院・聖路加国際病院で内分泌・代謝疾患の診療に従事。現在は東京都中央区日本橋で脂質異常症などの代謝疾患の専門外来を担当。「数字ではなく“納得できる説明”を提供する医療」をモットーに、脂質異常症や糖尿病を丁寧に啓蒙することをライフワークとしている。

 

 

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