健診で「中性脂肪が低い」と言われた方へ|放置して大丈夫?受診の目安を内分泌代謝専門医が解説
健診で「中性脂肪が低い」と言われた方へ|放置して大丈夫?受診の目安を解説
健康診断の結果を見て、
「中性脂肪が低いですね」
「30mg/dl未満でした」
と言われ、不安になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中性脂肪は「高いとよくない」というイメージが強いため、低いと言われても、
「むしろ良いことなのでは?」
と思われがちです。
たしかに、中性脂肪は高すぎると動脈硬化や膵炎などのリスクに関わります。
一方で、中性脂肪が低すぎる場合にも、体質だけでなく、栄養不足や甲状腺の病気、肝臓の病気などが隠れていることがあります。
この記事では、内分泌代謝専門医の立場から、
- 中性脂肪が低いとはどういうことか
- どんな原因が考えられるのか
- どんな人は受診した方がよいのか
- 受診すると何を調べるのか
について、できるだけわかりやすく解説します。
そもそも中性脂肪とは?
中性脂肪(トリグリセライド、TG)は、体の中で使われる大切なエネルギー源です。食事から取り入れた脂質や糖質をもとに作られ、余ったエネルギーを蓄える役割もあります。
つまり、
中性脂肪は「高すぎることは当然問題」ですが、
「低すぎる場合には何か背景がないか考える」という見方が大切です。
健診でいう「中性脂肪が低い」とは何mg/dLくらい?
日本動脈硬化学会のガイドラインは、高トリグリセライド(中性脂肪)血症の基準を示していますが、低トリグセライド(中性脂肪)症の全国統一の診断基準を示しているわけではありません。
そのため、健診では施設ごとに基準範囲が少し異なりますが、30mg/dL未満前後を“低い”として扱うことが多いです。
実際、健診結果に
- 中性脂肪 29mg/dL
- 中性脂肪 25mg/dL
- 中性脂肪 20mg/dL台
などと書かれていた場合は、しっかりと内容を確認する価値があります。
中性脂肪が低い原因は?
中性脂肪が低い原因として多いのは、まず食事量が少ないことや栄養不足です。とくに、無理なダイエット、脂質を極端に避けた食事、食欲低下、高齢者の食事量低下などは代表的です。
1.食事制限・栄養不足
- ダイエットで食事量が少ない
- 脂質や糖質をかなり控えている
- 忙しくて食事が不規則
- 高齢で食べる量が落ちている
これは健診で最もよく出会うパターンです。
2.甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
甲状腺ホルモンが過剰になると代謝が上がり、中性脂肪が消費されやすくなります。
動悸、汗が多い、体重減少、手のふるえ、疲れやすさなどがある場合は、甲状腺の検査が大切です。
3.肝機能の低下・肝臓の病気
中性脂肪は肝臓で合成されるため、肝機能が大きく低下すると低値になることがあります。重い肝障害では、健診のAST、ALT、γ-GTPなどにも異常が出ていることが少なくありません。
4.吸収不良や慢性的な消耗
腸での吸収がうまくいかない状態や、慢性疾患などの消耗性疾患が背景にあることもあります。頻度は高くありませんが、体重減少や食欲低下を伴う場合には見逃したくないポイントです。
5.体質・遺伝
もともと体脂肪が少なく、中性脂肪が低めの方もいます。若い女性や痩せ型の方では、病気ではなく体質として低値になることもあります。まれに遺伝性の脂質代謝異常が関与することもあります。
6.運動量が非常に多い
アスリートや強い運動習慣のある方では、エネルギー消費が大きく、中性脂肪が低めに出ることがあります。
中性脂肪が低いと、体にどんな影響がありますか?
中性脂肪が低いからといって、その数値だけで直ちに危険というわけではありません。
ただし、背景に栄養不足や甲状腺の病気がある場合には、当然そちらの対応が必要です。
大事なのは、
「中性脂肪が低いこと自体を治療する」のではなく、なぜ低いのかを見極める必要があるということです。
健診で中性脂肪が低かったら、すぐ受診した方がよいのはどんな人?
次のような場合は、一度医療機関で相談した方が安心です。
受診をおすすめするケース
- 中性脂肪が30mg/dL未満前後だった
- 前は正常だったのに、急に低くなった
- 体重が減ってきた
- 動悸、手のふるえ、汗が多い、暑がりなどがある
- 食欲低下がある
- AST、ALT、γ-GTP などほかの検査値にも異常がある
- 無理なダイエットや偏った食事をしている
- 高齢で食事量が減っている
とくに、“昔からずっと低い”のか、“最近になって低くなった”のかはとても重要です。
放置してよいこともありますか?
あります。
たとえば、
- 若いころからずっと低め
- 体調はよい
- 体重変化がない
- 甲状腺、肝機能、栄養状態に問題がない
- 痩せ型や運動量の多い体質に合っている
このような場合は、病的な意味を持たないことも少なくありません。ただし、健診の紙だけではそこまで判断できないことがあるため、“低いから安心”と自己判断しすぎないことが大切です。
医療機関では何を調べるのですか?
中性脂肪が低い方を診るときは、単に脂質だけを見るのではなく、全体を整理します。
1.採血条件の確認
まず、空腹時かどうかを確認します。中性脂肪は食事の影響を受けやすいため、採血条件は重要です。
2.食事・体重・運動の確認
- 最近やせたか
- 食事量は十分か
- 糖質や脂質を極端に制限していないか
- 運動量が多すぎないか
3.甲状腺機能の確認
甲状腺機能亢進症が疑われる場合は、TSH、FT4(必要に応じてFT3)を確認します。
4.肝機能や栄養状態の確認
AST、ALT、γ-GTP、アルブミン、総蛋白、血算などを見て、肝機能低下や栄養不良がないかを確認します。
5.必要に応じて追加検査
症状やほかの異常値があれば、消化器疾患や吸収不良、慢性疾患なども視野に入れて評価します。
中性脂肪を上げるために、油をたくさん摂ればよいのでしょうか?
健診で中性脂肪が低いと、「では脂っこいものを増やそう」と考えたくなるかもしれません。しかし、原因がわからないまま自己流で食事を変えるのはおすすめできません。
大切なのは、
「低い数値を無理に上げる」ことではなく、「低い理由に応じて対応する」こと
です。
当院の脂質異常症外来でできること
中性脂肪が低い場合、患者さんは
「これって気にしなくていいの?」
「痩せているからなだけ?」
「甲状腺の病気だったらどうしよう」
と迷われることが少なくありません。
当院では、単に「様子をみましょう」で終わらせるのではなく、脂質異常症、栄養状態、甲状腺、生活背景まで含めて整理する外来を行っています。
とくに当院は、内分泌代謝専門医(2名在籍)として、
- 脂質異常症の評価
- 甲状腺疾患の評価
- 体重減少や栄養状態の見方
- 生活習慣病全体のバランス確認
をまとめて行えるのが強みです。
「健診で中性脂肪が低いと言われたけれど、何科にかかればよいかわからない」
そのような方こそ、一度ご相談ください。
こんな方は、当院にご相談ください
- 健診で中性脂肪が低いと言われた
- 30mg/dL未満で要受診と言われた
- やせてきた、食欲が落ちた
- 動悸や手のふるえがあり、甲状腺が心配
- 健診結果を持って、まとめて相談したい
脂質の異常は、「高い」だけでなく「低すぎる」場合にも、体からのサインが隠れていることがあります。健診結果の見方に迷ったときは、自己判断せず、早めにご相談ください。
よくあるご質問
Q).中性脂肪が低いのは、むしろ健康的ということですか?
A).必ずしもそうとは限りません。高すぎる中性脂肪は問題になりますが、低すぎる場合も、栄養不足や甲状腺機能亢進症などが背景にあることがあります。
Q).何mg/dLくらいから受診した方がよいですか?
A).施設によって差はありますが、健診では30mg/dL未満前後を低値として扱うことが多いです。とくに29mg/dL以下、症状あり、体重減少あり、最近急に低くなった場合は相談をおすすめします。
Q).低い場合、甲状腺の病気のことがありますか?
A).あります。甲状腺機能亢進症では代謝が高まり、中性脂肪が低下することがあります。動悸、発汗、手のふるえ、体重減少などがある場合は、甲状腺検査が有用です。
Q).まず何科を受診すればよいですか?
A).健診結果全体を見ながら、脂質、栄養状態、甲状腺、肝機能を整理できる内科・脂質異常症外来が適しています。
まとめ
健診で中性脂肪が低いと言われても、すぐに深刻な病気とは限りません。実際には、痩せ型体質や食事量の少なさが背景のことも多くあります。
ただし、
- 数値がかなり低い
- 以前より下がっている
- 体重減少や動悸などの症状がある
- 他の検査値もおかしい
といった場合には、甲状腺機能亢進症、肝機能低下、栄養不良などを確認する価値があります。
「低いのは良いこと」と決めつけず、でも必要以上に怖がりすぎず、背景を正しく確認すること。
それがいちばん大切です。
健診で中性脂肪の低値を指摘された方は、どうぞ当院の脂質異常症外来へご相談ください。
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▶︎ 著者・監修紹介:
玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)
- 日本内科学会認定 内科専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
東大病院・聖路加国際病院で内分泌・代謝疾患の診療に従事。現在は東京都中央区日本橋で脂質異常症などの代謝疾患の専門外来を担当。脂質異常症、糖尿病、甲状腺疾患をはじめとする生活習慣病・内分泌疾患について、専門医としてわかりやすく正確な情報発信を心がけています。
