脂質異常症の薬、全部わかる!|代謝専門医がやさしく解説する作用・副作用・選び方
【完全ガイド】コレステロール・中性脂肪を下げる薬|代謝専門医が全種類をわかりやすく解説
「この薬ってどんな働きなの?」
「副作用が心配…」
「いきなり薬が出されたけどよくわからない....」
そんな疑問や不安を持つ方のために、脂質異常症の専門家である日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医が、今使われている脂質異常症のすべての薬(一般名・商品名)を、わかりやすく整理して解説します。
目次
- 脂質異常症の治療は「薬ありき」ではない
- 脂質異常症の治療薬の分類と特徴
- 薬の選び方と使い分けのポイント
- よくある質問Q&A
- まとめ
1. 脂質異常症の治療は「薬ありき」ではない
まず大前提としてお伝えしたいのは、いきなり薬に頼る必要はないということです。
- 生活習慣(食事・運動・睡眠など)の改善が第一です。
- しかし、①それでも改善が乏しい場合や、②遺伝や体質などの要素が大きい場合、③動脈硬化のリスクが高い人(例:糖尿病・心筋梗塞の既往ありなど)には、早期の薬物治療が勧められます。(※詳しくは以下の記事をご参照ください)
👉【脂質異常症とは何か?正しく知ることが“将来の安心”につながります】|内分泌代謝専門医が解説|東京都中央区・日本橋
👉【コレステロールは薬なしで下げられるか?専門医が実践する生活習慣のコツ5選】|内分泌代謝専門医が解説
👉【LDLコレステロール治療の始めどき】日本動脈硬化学会ガイドラインに基づいた判断基準を代謝専門医が丁寧に解説
2.脂質異常症の治療薬の分類と特徴
1. スタチン系(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
- 作用機序:肝臓でのコレステロール合成を抑制し、血中LDLを低下させる
- 代表的な商品名と成分名:
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成分名(一般名) |
商品名 |
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アトルバスタチン |
リピトール、アトーゼット(※エゼチミブとの合剤) |
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ロスバスタチン |
クレストール |
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ピタバスタチン |
リバロ |
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プラバスタチン |
メバロチン |
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シンバスタチン |
リポバス |
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フルバスタチン |
ローコール |
- 副作用:肝機能障害、筋肉痛、まれに横紋筋融解症
- 選択基準:LDL-C低下の第一選択薬。高リスク例ではクレストールやリピトールが使われる。
2. エゼチミブ(小腸コレステロール吸収阻害薬)
- 作用機序:小腸からのコレステロール吸収をブロック
- 一般名:エゼチミブ
- 商品名:ゼチーア、アトーゼット(アトルバスタチン+エゼチミブの合剤)
- 副作用:胃腸症状、肝機能異常
- 選択基準:スタチン単剤でLDL-C目標に届かない場合に追加、またはスタチンが使えない方に単独使用。
3. PCSK9阻害薬(注射薬)
- 作用機序:LDL受容体の分解を抑えて、LDLコレステロールを強力に低下させる
- 一般名/商品名:
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成分名 |
商品名 |
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エボロクマブ |
レパーサ |
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アリロクマブ |
プラルエント |
- 副作用:注射部位の腫れ、上気道症状など(軽度)
- 選択基準:スタチン+エゼチミブで不十分な場合、または家族性高コレステロール血症(FH)の方に保険適用で使用
4. 陰イオン交換樹脂
- 作用機序:胆汁酸を吸着・排泄することで、肝臓のコレステロール利用を促進
- 一般名/商品名:
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成分名 |
商品名 |
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コレスチミド |
コレバイン |
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コレスチラミン |
クエストラン |
- 副作用:便秘、膨満感、消化不良
- 選択基準:高齢者やスタチンが使えない人に。現在はあまり使用されない。
5.フィブラート系薬(PPARα作動薬)
- 作用機序:脂肪の分解・TG合成抑制
- 一般名/商品名:
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成分名 |
商品名 |
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ベザフィブラート |
ベザトールSR |
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フェノフィブラート |
リピディル |
- 副作用:肝機能障害、腎機能悪化、筋肉痛、胆石形成
- 選択基準:TG > 300-500mg/dL 以上の方に適応。腎障害がある場合は注意が必要。
6. 選択的PPARαモジュレーター
- 作用機序:PPARαに選択的に作用し、副作用を抑えつつ中性脂肪を下げる薬
- 一般名/商品名:
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成分名 |
商品名 |
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ペマフィブラート |
パルモディア |
- 副作用:肝機能障害、腎機能異常(従来より少ない)
- 選択基準:スタチン系との併用が可能、腎機能が低下している方でも減量することで内服可能。
7.n-3系多価不飽和脂肪酸(EPA・DHA)
- 作用機序:中性脂肪の合成抑制+分解促進
- 一般名/商品名:
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成分名 |
商品名 |
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イコサペント酸エチル |
エパデール |
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EPA+DHAエチルエステル |
ロトリガ オメガ-3脂肪酸エチル |
- 副作用:胃腸症状、げっぷ、軽い出血傾向(※魚油なので薬の臭いが受け付けない方もいる)
- 選択基準:副作用が少なく使いやすい。中性脂肪がやや高めの人に向いている。
8.MTP阻害薬
- 作用機序:肝臓と腸での脂質合成をブロック
- 一般名/商品名:
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成分名 |
商品名 |
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ロミタピド |
ジュークビス(海外名:ロミタピド) |
- 副作用:肝機能障害、消化器症状
- 選択基準:ホモ接合型家族性高コレステロール血症などの特殊症例で専門施設のみで使用
9.ニコチン酸誘導体
- 作用機序:脂肪組織からの遊離脂肪酸放出を抑制し、LDL・TG両方を低下
- 一般名/商品名:
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成分名 |
商品名 |
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ニコモール |
ニコモール錠 |
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ニコチン酸トコフェロール |
ナイクリン |
- 副作用:顔の紅潮、頭痛、かゆみ、肝障害
- 選択基準:現在はほとんど使用されないが、薬剤変更や補助薬として選択肢になることも。
3. 薬の選び方と使い分けのポイント
①LDLコレステロールが高いなら
- 基本はスタチンから開始
- 効果が不十分なら→エゼチミブ追加
- それでもだめなら→PCSK9阻害薬(注射)
②中性脂肪(TG)が高いなら
- 食事や飲酒の効果が大きいため、まずは生活習慣の見直しが基本。
- 改善なければ、選択的PPARα阻害薬(パルモディア)やフィブラート系などを使用する。スタチン系と併用しやすいのはPPARα阻害薬。
③HDLコレステロールが低いだけなら
- 原則薬は不要
- 食事・運動・禁煙を優先
4. よくある質問(Q&A)
Q. 薬は一生飲み続けるの?
A. 生活改善で目標達成すれば中止できることもありますが、再上昇することも多く、医師の指導のもと判断します。
Q. スタチンを飲んでいる時に筋肉痛が出たらどうすれば?
A. スタチンの副作用の可能性があります。早めに医師へご相談ください。
Q. 薬を飲み忘れたときは?
A. 気づいた時点ですぐに飲んでOKですが、次の服用が近いときは飛ばして構いません(2回分をまとめて飲まないこと)。
Q. 飲み合わせで注意する薬はありますか?
フィブラートとスタチンの併用は筋障害リスクに注意が必要です。また、レジン系は他の薬の吸収を妨げるので服用間隔に注意が必要です。
5.まとめ:薬に「安心」して向き合うために
薬には必ず「効果」と「副作用」があります。そして基礎疾患や併用薬によっても細やかな調整が必要になります。大事なのは、信頼できる医師とともに、あなたの状態に合った薬を選び、適切に使っていくことです。このページを読んで、「なるほど、薬ってそういう仕組みだったんだ!」と思っていただけだければ幸いです。
著者紹介:
玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)
- 日本内科学会認定 内科専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
東大病院・聖路加国際病院で脂質異常症、糖尿病の専門診療に従事。現在は東京都中央区・日本橋で脂質異常症の早期発見・治療を通じて、将来の冠動脈疾患や脳卒中を防ぐ活動を行っています。

