HDL-C(善玉コレステロール)が高いのは良いこと。ただし「高すぎ」は要チェック|内分泌代謝専門医が解説
HDL-Cが高いのは良いこと。ただし「高すぎ」は要チェック
健康診断で「HDL-C(善玉コレステロール)が高いですね」と言われると、安心する方が多いと思います。
HDL-Cは一般的に、低いより高いほうが望ましいことが多い指標です。
一方で、HDL-Cが「高すぎる」時は、考え方が少し変わります。
この記事では、専門用語をできるだけ使わずに、次の疑問に答えます。
- HDL-Cは何をしているのか
- どのくらいから「高すぎ」なのか
- 高すぎるときに何を確認すればよいのか
- 最新の研究では何が分かっていて、何が分かっていないのか
結論:HDL-Cが高すぎる場合、確認すること3つ
- HDL-Cが80以上(とくに90〜100以上)なら、「なぜ高いのか(理由)」を一度確認する
- LDL-Cと中性脂肪を見る
- HDL-Cを下げることを目標にしない(代わりに、治療で改善できて動脈硬化と関わる項目を丁寧に整える)
この3つを押さえていただければ大丈夫です。ここからはそれを詳しく解説していきます。
HDL-Cは何をしている?
HDL-Cは、血管にたまりやすいコレステロールを回収し、肝臓へ運ぶ働きを担っています。
イメージとしては「血管の片づけ役」です。
そのため、HDL-Cが低い状態が続くと、動脈硬化が進みやすくなり、将来的に次の病気のリスクが上がりやすいと考えられています。
- 狭心症、心筋梗塞
- 脳梗塞
- 足の血管の病気(閉塞性動脈硬化症など)
健診での目安
健康診断でよく使われるHDL-Cの目安は、だいたい次の通りです。
- 40 mg/dL未満:低い(注意が必要)
- 40〜60 mg/dL:標準的
- 60 mg/dL以上:一般的には良い方向
ここまでは、多くの人に当てはまる話です。
HDL-C60mg/dL以上は基本的に良い方向です。ただし80mg/dL以上の高めのHDL-Cは、次の章で説明する通り「理由の確認」が役立つことがあります。
HDL-Cの「高すぎ」はどのくらい?
世界共通の危険ラインが決まっているわけではありません。ただ、目安としては次のように考えると実用的です。
- HDL-C 80 -90mg/dL:高め
- HDL-C 90-100 mg/dL以上:とても高い
なぜ「高すぎ」は"理由(原因)"を確認したほうがいいの?
理由は大きく2つあります。
1)HDL-Cが高いのには、いくつか「よくある理由」がある
HDL-Cが高い人は、だいたい次のどれかに当てはまることが多いです。
- 体質(昔から高い/家族も高い)
- お酒(飲酒で上がる人がいる)
- 運動(運動で上がる人もいる)
- その他(まれに薬や背景の病気など)
ここを確認するメリットはシンプルです。理由が見えてくると、不安が減りやすくなります。
2)HDL-Cが極端に高い群で、死亡が多い可能性を示した研究がある
国内外の研究で、HDL-Cが極端に高い人たちのグループに、死亡が多い可能性がある、という報告があります(参考文献2,3)。
ただし重要なのは、これが「原因を証明した研究」ではないことです。
「HDL-C超高値の人たちのグループで、結果として死亡が多かった」という“関連”を示したもので、HDL-Cが高いことが死亡に繋がった原因だと断定はできません。
だからこそ結論としては、HDL-Cが高いこと自体で慌てる必要はありません。
そのかわり「高いから大丈夫」で止まらず、LDL-Cや中性脂肪など、確実に動脈硬化と関わる項目を丁寧に整える。これが現時点でいちばん安全で、いちばん実用的です。
高すぎるHDL-Cを下げればいいの?
現時点で、「HDL-Cを安全に下げて良い結果が出る」という確立した方法はありません。また、そもそも「HDL-C超高値を正常化したら長生きするのか」も分かっていません。
そのため、やるべきことは「HDL-Cを下げること」ではありません。
本当にやるべきこと:LDL-Cなど他のリスク管理を丁寧に
高すぎるHDL-Cの話で一番大切なのは、ここです。
- LDL-C(悪玉)は高くないか
- 中性脂肪(TG)は高くないか
- 血圧、血糖、喫煙、家族歴などはどうか
HDL-Cが高いからといって、LDL-Cが高いのを帳消しにはできません。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022でも、脂質管理はHDL-C単独ではなく、総合評価とLDL-C中心の管理が軸とされています。
そのため、HDL-Cが超高値でも「善玉だから大丈夫」と思考停止せず、LDL-Cや血圧・血糖・中性脂肪など、治療で改善できて動脈硬化と関わる項目を丁寧に整える。これがいちばん妥当です。
よくある質問(FAQ)
Q1. HDL-Cが高いから、LDL-Cが高くても大丈夫?
A1. 大丈夫ではありません。LDL-Cが高ければLDL-Cの対策が必要です。
Q2. HDL-Cが100ある。下げたほうがいい?
A2. HDL-Cを下げる確立した介入法はありません。下げるより、LDL-Cなど他の管理を丁寧に行うのが合理的です。
Q3. HDL-Cが高いのはお酒のせい?
A3. 飲酒でHDL-Cが上がる人は少なくありません。晩酌が多い、週のほとんど飲む、など当てはまる場合は、HDL-Cだけでなく肝機能なども含めて全体で確認します。
Q4. 何科に相談すればいい?
A4. 脂質異常症は内科でも相談できますが、脂質の評価や背景(体質・飲酒など)まで含めて整理したい場合は、内分泌代謝科の専門外来が向いています。
▶︎参考文献
- Japan Atherosclerosis Society (JAS). Japan Atherosclerosis Society (JAS) Guidelines for Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2022. Tokyo: Japan Atherosclerosis Society; 2022. Available from: https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_220808.pdf (accessed 2026-02-19).
- Liu C, Dhindsa D, Almuwaqqat Z, Ko YA, Mehta A, Alkhoder AA, et al. Association Between High-Density Lipoprotein Cholesterol Levels and Adverse Cardiovascular Outcomes in High-risk Populations. JAMA Cardiol. 2022; Published online May 18. doi:10.1001/jamacardio.2022.0912.
- Hirata A, Sugiyama D, Watanabe M, Tamakoshi A, Iso H, Kotani K, et al; EPOCH–JAPAN Research Group. Association of extremely high levels of high-density lipoprotein cholesterol with cardiovascular mortality in a pooled analysis of 9 cohort studies including 43,407 individuals: The EPOCH–JAPAN study. J Clin Lipidol. 2018;12:674-684. doi:10.1016/j.jacl.2018.01.014.
初診・転院・セカンドオピニオンのご案内
玉寄クリニックでは、目的に合わせて次の3つの形でご相談いただけます。当院の脂質異常症外来の詳細はこちらから。
① 初診(健診でコレステロール高値を指摘された方)
健康診断・人間ドックの結果をお持ちください。数値の意味と背景を一緒に整理します。
② 転院(当院での継続治療をご希望の方)
他院で治療中の方で、当院へ転院して継続治療をご希望の場合は受診可能です。紹介状や直近の採血結果があるとスムーズです。
③ セカンドオピニオン(今の主治医は変えずに相談したい方)
「治療方針が腑に落ちない」「薬や検査について整理したい」など、当院にも一度相談したい方は、自費診療のセカンドオピニオンとして対応可能です。
いずれの初診(①〜③)も、健診結果を確認し、背景まで整理するためお電話による予約制となります。
電話:03-3661-5555
受付:9:00–12:20/14:30–17:50
住所:東京都中央区日本橋人形町1丁目12−11リガーレ日本橋人形町105
▶︎著者紹介:
玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)
- 日本内科学会認定 内科専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
東大病院・聖路加国際病院で内分泌・代謝疾患の診療に従事。現在は東京都中央区日本橋で脂質異常症などの代謝疾患の専門外来を担当。「“納得できるわかりやすい説明”を提供する医療」をモットーに、脂質異常症や糖尿病を丁寧に啓蒙することをライフワークとしている。

