NHKトリセツショーで紹介「健康診断オールAへの近道」|糖尿病専門医が噛み砕いて解説(体重−3%がカギ)
NHKトリセツショーで紹介「健康診断オールAへの近道」|糖尿病専門医が噛み砕いて解説(体重-3%がカギ)
2026年3月5日に放送されたNHK「あしたが変わるトリセツショー」のテーマは「健康診断オールAへの近道」でした。
健診表を活用して「突然死リスク」や「血管の状態」に気づき、尿酸・血糖・脂質などを“ひとつの軸”でまとめて改善する、という内容です。
私は糖尿病専門医かつ内分泌代謝専門医として、日々の外来で、
「健診でひっかかったけれど、何から手をつけたらいいか分からない」
という方を多く診ています。
今回の放送は、まさにその悩みを整理して行動に変える良い切り口でした。
まず結論(番組のまとめ)
- 健診項目はバラバラではなく、「血管のダメージの段階」でまとめて見るとわかりやすい
- 「ちょい悪」を甘く見ず経年(過去3年)で見ると本当の変化が見えます。
- 血圧・血糖・脂質・尿酸を一気に動かす近道は、"内臓脂肪を減らすこと(現体重−3%)"です。
この3つが腑に落ちると、健診は“通知表”ではなく、健康への“地図”になります。
1)健診項目は「血管のダメージ」で4段階に分けると一気に理解できる
健診の項目や数値は多く、「どれが大事なの?」となりがちです。番組の良い点は、健診項目を「血管のダメージの進み具合」で段階分けして見せたことでした。
イメージはこうです。
- レベル1:土台(内臓脂肪、肝機能、中性脂肪、HDLなど)
- レベル2:血管に負担がかかる(血圧、血糖、尿酸、LDLなど)
- レベル3:臓器の検査で変化が出始める(腎機能、尿蛋白、心電図、眼底など)
- レベル4:脳梗塞や心筋梗塞など(結果として表に出る)
(※番組の内容を参考に当院で作成)
ここでポイントは、レベル2の「血圧・血糖・尿酸・LDL」が、突然単独で悪くなるというより、レベル1(内臓脂肪など)の影響を受けて悪くなりやすい、という見方です。
2)「ちょい悪」を甘く見ない。健診は“経年”で見るほど価値が出ます
外来でよくあるのが、こういうケースです。
「基準値をちょっと超えただけだから様子見で…」
「毎年同じだから体質だと思って…」
でも実際は、年単位で並べると「じわじわ悪化」していることが少なくありません。
番組で語られた「ちょい悪が積み重なるほど危ない」という感覚は、臨床でもかなり一致します。
健診の使い方としておすすめ
- 直近だけを見るのではなく、過去3年分を並べる
- “1項目だけ”ではなく、複数項目が同時に悪くなっていないかを見る
- 「判定A→B→C」より、「Aのまま微増」を見逃さない(脂質や血糖はこれが多い)
▶︎ 参考記事:
健康診断で
・「血圧が高いと言われた方へ」
3)血圧・脂質・血糖・尿酸を同時に良くするなら、内臓脂肪を落とす
今回の番組の核心はここです。
尿酸・血糖・脂質などを“たった1つの方法”でまとめて改善する、その中心に置かれていたのが「内臓脂肪」でした。
内臓脂肪が増える
→ インスリンが効きにくくなる
→ 血糖が上がりやすくなる
→ 中性脂肪が上がりやすくなる
→ 血圧も上がりやすくなる
→ 尿酸も上がりやすくなる
という「まとめて悪化ルート」になりやすいからです。
内臓脂肪を減らす対策は「体重−3%」が現実的
内臓脂肪を効率的に減らす方法として、番組でも扱われていたのが「3%ダイエット」です。
日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」でも、肥満症の減量目標として現体重の3%以上が示されています。 また、特定保健指導の研究でも、3%以上の減量で腹囲や血圧、中性脂肪、HDL-Cなどの改善が大きいことが報告されています。
「減量」と聞くと身構える方もいますが、現体重から−3%は現実的です。
例)
・70kg → 67.9kg(−2.1kg)
・80kg → 77.6kg(−2.4kg)
外来でも、生活を極端に変えなくても、ここまでは到達できる方は多いです。
「−3%」を現実にするコツ:100kcalの差を積み上げる
無理なくダイエットを進める方法として、番組で紹介されていたのが「100kcalカード(100kcalシート)」です。
これは、“きつい我慢”ではなく、毎日できそうな小さな工夫を積み重ねるやり方です。
体重を約3%減らすには、目安として
1日あたり−300kcal を2か月続けることが一つの目安になります。
そこで使うのが「100kcalカード」です。考え方はシンプルで、
−100kcalの工夫を1日3つ 選ぶだけ。
−100kcal × 3つ = −300kcal/日
→ これを続けると「体重−3%」が狙いやすい、という仕組みです。
100kcalカード(例):以下の中から、今日できそうなものを3つ選ぶだけ
① 食事で−100kcal(どれか1つ)
- ごはんをひと口〜2口減らす(“ちょい残し”でOK)
- 揚げ物を少し減らす(1個減らす/衣を少し残す など)
- 甘い飲み物をやめて、水・お茶に置き換える
② 運動で−100kcal(どれか1つ)
- いつもより10〜15分多く歩く
- エスカレーターをやめて階段にする
- 家事(掃除・片づけ)を増やしてこまめに動く
③ 生活で−100kcal(どれか1つ)
- 座りっぱなしを減らす(1時間に1回立つ)
- 1駅手前で降りる/遠回りして歩く
- 夜食をやめる(または量を半分にする)
「完璧に計算する」ことが目的ではありません。
"自分が続けられる小さな−100kcalを3つ”が、いちばん大事なポイントです。
注意!全員が“減量だけ”でLDL(悪玉)が下がるわけではありません
ここは内分泌代謝専門医として強調しておきたい点です。血圧・中性脂肪・血糖・尿酸は、内臓脂肪を落とすと動きやすい一方で、LDLコレステロールは、体重とは別の要因が強い方もいます。
例)
- 痩せているのにLDLだけ高い
- 食事を気をつけているのにLDLが動かない
この場合は、減量だけで勝負せず、原因の整理(採血を含め)と、必要なら薬も含めた選択肢を一緒に考えるほうが納得感が高いです。
▶︎参考記事:痩せているのにコレステロールが高いのはなぜ?体質・遺伝・更年期・甲状腺で腑に落ちる説明
今日からできる「健診の使い方」3つ
1)過去3年分を並べる
2)基準値オーバーを丸で囲む
3)「まとめて良くなりやすい項目」と「別ルートで考える項目」を分ける
・まとめて良くなりやすい:血圧・中性脂肪・血糖・尿酸
・別ルートもあり得る:LDL(体質・ホルモン・薬など)
受診の目安(放置しないほうがいいケース)
・血圧が高い日が続く
・血糖(HbA1c含む)が明確に高い
・尿酸が高く、痛風発作がある/腎機能も気になる
・LDLや中性脂肪がかなり高い
・複数項目が同時に悪い
・数年で悪化している
よくある質問(FAQ)
Q1. 健診がAでも「じわじわ悪化」って本当ですか?
A.はい。判定がAでも、数値が毎年少しずつ上がっていることがあります。健診は単年より経年(過去3年)で見たほうが変化を捉えやすいです。
Q2. 体重−3%で、本当に何が変わりますか?
A.ガイドラインでは肥満症の減量目標として現体重−3%以上が示されています。また、特定保健指導の研究では、3%以上減量した群で腹囲・血圧・脂質などがより改善したことが報告されています。
Q3. 100kcalカードは、毎日必ず3つやらないとダメですか?
A.「毎日完璧」が目的ではありません。大切なのは続く仕組みです。できる範囲で積み上げるほうが成功率が上がります。
Q4. LDL(悪玉)だけ高い場合も、まず減量ですか?
A.LDLは体重だけで動きにくい方もいます。体質・ホルモン・遺伝などの影響が大きい場合は、原因整理と治療選択肢(薬を含む)を一緒に検討するのがおすすめです。
Q5. どのタイミングで病院に相談すべきですか?
A.複数項目が同時に悪い、数年で悪化している、痛風発作がある、血糖/HbA1cが明確に高いなどは早めの相談が安心です。
まとめ
健診でオールAを目指すコツは、気合いよりも「見方」と「続く仕組み」です。血圧・脂質・血糖・尿酸といった項目を同時に良くする近道は、内臓脂肪を落とすこと。まずは体重−3%という現実的な目標を、100kcalの積み上げで取りに行く。これが外来の現場感覚としても、いちばん再現性が高いと感じます。
▶︎参考にした情報
- NHK「あしたが変わるトリセツショー」2026年3月5日放送「健康診断オールAへの近道」
- 日本肥満学会:肥満症診療ガイドライン2022(減量目標:肥満症は現体重−3%以上)
- 特定保健指導における3%減量目標の意義(産業衛生学雑誌/J-STAGE)
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▶︎著者紹介:
玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)
- 日本内科学会認定 内科専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
東大病院・聖路加国際病院で内分泌・代謝疾患の診療に従事。現在は東京都中央区日本橋で脂質異常症などの代謝疾患の専門外来を担当。「数字ではなく“納得できる説明”を提供する医療」をモットーに、脂質異常症や糖尿病を丁寧に啓蒙することをライフワークとしている。

