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妊娠糖尿病

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖の異常で、生活習慣病である糖尿病の診断基準は満たしていない状態です。胎児は母体に比べ、高血糖のダメージを受けやすいことから、妊娠糖尿病の診断基準は、糖尿病の診断基準より厳しくなっています。妊娠糖尿病と診断された方は、健康な赤ちゃんを産むために出産まで、食事・運動療法、インスリンによる薬物療法を併用しながら、血糖管理を行う必要があります。もし、妊娠糖尿病と診断されたら、できるだけ、妊娠糖尿病の経験豊富な糖尿病専門医がいる病院を選びましょう。当院は、東京大学医学部附属病院、聖路加国際病院で研鑽をつみ、日本橋人形町・小伝馬町・浜町周辺ではまだ唯一の内分泌代謝糖尿病領域専門医をもつ医師が診察いたします。ご心配な方は、お気軽にご相談ください。

 

妊娠糖尿病が起こす合併症

妊娠糖尿病を発症し、血糖コントロールを行わないでいると、お母さん側にも、赤ちゃん側にも、さまざまな合併症を引き起します。

①お母さん側

妊娠中に、妊娠高血圧症や腎障害のリスクがあります。出産にあたっては、流産・早産・血管障害・羊水異常・肩甲難産などのリスクが高まります。また、高血糖からの脱水や意識障害をきたすこともあります。

②赤ちゃん側

胎内では、子宮内胎児死亡・子宮内発育遅延・先天奇形・巨大児などのリスクがあります。また、出産後、新生児低血糖・多血症・新生児黄疸などを発症することもあります。

 

診断について

妊娠されている方の糖尿病は、妊娠糖尿病・妊娠中の明らかな糖尿病・糖尿病合併妊娠の3つに分けられます。

①妊娠糖尿病

75gブドウ糖検査で、以下の1 点以上を満たした場合に診断されます。

  1. 空腹時血糖値 ≧92mg/dl
  2. 1時間値 ≧180mg/dl
  3. 2 時間値 ≧153mg/dl

妊娠糖尿病は、妊娠して初めて血糖の異常が見つかり、かつその血糖値が糖尿病の基準を満たさない場合に診断されます。出産後の血糖は、正常に戻ることが多いですが、糖尿病の発症リスクは妊娠糖尿病のなかった女性に比べて高くなります。

②妊娠中の明らかな糖尿病

以下のいずれかを満たした場合に、診断されます。

  1. 空腹時血糖値 ≧126 mg/dl
  2. HbA1c 値 ≧6.5%

妊娠前に見逃されていた糖尿病や、妊娠中に急に発症した1型糖尿病なども、ここに含まれます。出産後も血糖が正常化しないことがあるため、必ず再検査が必要です。

 

③糖尿病合併妊娠
  1. 妊娠前にすでに診断されている糖尿病
  2. 確実な糖尿病網膜症があるもの

妊娠前から糖尿病と診断されている場合は、妊娠による糖尿病悪化のリスクを避けるため、血糖を厳格にコントロールすることが必要になります。糖尿病腎症や糖尿病網膜症がある方は、妊娠の時に悪化することがありますので、注意しましょう。

 

妊娠糖尿病の治療

①食事療法

妊娠糖尿病は、お母さんの体の中の血糖が高いため、赤ちゃんも太ってしまい、巨大児の原因となります。4000g以上の赤ちゃんのことを巨大児といい、難産の原因になるほか、赤ちゃんも出産後に低血糖をきたしたり、高ビリルビン血症などの合併症を引き起こしやすくなります。妊娠糖尿病と診断されたら、お母さんも過度に体重が増えないように注意しましょう。お母さんに肥満がない場合、おおよそのカロリーの目安は以下のように計算します。

妊娠初期
(-13週)
標準体重×30kcal+50kcal
妊娠中期
(14-27週)
標準体重×30kcal+250kcal
妊娠後期
(28週-)
標準体重×30kcal+450kcal

標準体重とは、お母さんの身長から、BMI(体重(kg)/身長(m)2)が22になるように計算された体重です。たとえば、お母さんの身長が160㎝であれば、1.62×22=56.3kg(標準体重)となります。 BMI 25以上の肥満がある場合は、赤ちゃんの成長と、お母さんの血糖コントロールを見ながら慎重に食事エネルギー量の調整を行います。一概に〇〇kcalとは決して言えません。主治医と相談しながら、食事の量や栄養バランスを整えていきましょう。食事療法は、一汁三菜のバランス食を基本に、血糖を見ながら『分食』を行います。食後血糖が急に上昇するのを避けるため、主食を分割して、1日6食に調整します(朝食、10時、昼食、15時、夕食、夜食)。糖質を分けて少量ずつ食べることで、血糖コントロールを目標値に保つことができます。間食も大切な栄養源ですので、主治医と相談しながら選んでいきましょう。

 

②インスリン治療

妊娠後期になってくると、分食を行っても食後の血糖値が上がってきやすくなります。また、仕事などで、分食をとても行える環境ではない妊婦さんもおられます。そのときは、インスリン療法によって血糖コントロールを行います。空腹時血糖95mg/dl以下、食後1時間140mg/dl以下、食後2時間120mg/dl以下を目標に治療を行っていきます。

 

妊娠糖尿病で注意すること

妊娠糖尿病の方は、妊娠高血圧症候群や羊水の異常などが起こりやすくなります。また、赤ちゃんも、巨大児や心肥大、小児肥満や糖尿病など、さまざまなリスクがあります。なので、妊娠糖尿病の方は、無症状でもしっかりと血糖コントロールを行いましょう。

そして、とても大切なことですが、分食をしても血糖コントロールがつかず、医師にインスリン注射を勧められたときは、速やかに始めるようにしましょう。

インスリン注射には、まだどうしても怖いイメージがあるようです。外来で、インスリン注射のお話をするだけで、泣いてしまう妊婦さんもおられます。インスリンを使わずに、なんとか、食事だけで血糖をコントロールしようと試みられる方もおられます。そして、いちばんしっかり食べないといけない妊娠後期に食事を減らしてしまい、赤ちゃんの成長が不十分になってしまいます。

赤ちゃんが平均体重より軽く生まれると、これもまた、大きな健康リスクになります。胎児のときにお母さんから十分な栄養を貰えなかった赤ちゃんは、少ない栄養を効率よく吸収します。すると、出生後、他の子どもと同じものを食べても肥満になりやすく、いずれ、糖尿病や高血圧を発症しやすくなります。

妊娠中だけでなく、長い未来を考えて、インスリンをしっかり打ってあげましょう。インスリンの長期的な安全性は確認されています。副作用もほとんどなく、妊婦さんや子供にも安心して使用できます。最初は抵抗があった方も、実際に使ってみると、血糖コントロールが楽になり、食事もしっかり食べられるようになった、と笑顔になられます。どうか、あまり怖がらずに治療してください。

 

最後に

当院の糖尿病診療担当医は聖路加国際病院で外来診療を行っているため、聖路加国際病院との医療連携についても非常にスムーズです。お気軽にご相談ください。

 

玉寄クリニック

内分泌代謝糖尿病内科領域専門医

玉寄皓大

 

 

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