腹痛
お腹が痛い(腹痛)
「お腹が痛い」「胃が痛い」といった症状は人生において誰しも1度は経験するものです。痛みが強く、我慢できないくらいであれば、クリニックや病院を自ずと受診されると思われますが、痛みの程度が弱かったり、痛みが頻繁に起こってそれに慣れてしまうと、「この程度なら大丈夫か」、「またいつもの胃や腸の痛みだな」とそのままにしてしまうこともあるのではないでしょうか。
実際、皆さんが日常で何気なく経験されているほとんどのお腹の痛みは、食べすぎや、便秘、ガスが溜まっているなどが引き起こす「危なくないお腹の痛み」です。
一言に「お腹の痛み」と言っても、胃や腸だけでなく、膀胱、子宮、卵巣、腎臓、血管などが原因で起きることもあります。
また放置していると重症化するものもありますので、「これはいつもと違うかな?」と迷ったときは医療機関を受診するようにしましょう。
お腹の痛みでどこの診療科にかかるか迷ったときは、基本的にはまずは「内科」のクリニックを受診するようにしてください。(もし婦人科や泌尿器など他の科の疾患であった場合は速やかに適切な病院を紹介してもらえるはずです)
こんな症状が出たらすぐ病院へ
お腹の痛みで以下のような症状があれば"すぐ"医療機関を受診しましょう。
◆便に血が混じっている
◆便が黒い
◆突然、激しい痛みを感じた
◆痛みとともに血圧が下がってきている
◆冷や汗が出る
◆食事ができない、お水が飲めない
上に挙げたような症状があれば、すぐに治療しないといけない病気である可能性が高いので、迷わずに医療機関を受診するようにしてください。
上でお話しした、「いつもと違うかもと迷ったら受診する」という原則は変わりませんが、怖い腹痛かどうかの目安として、また、病院を受診した際にお腹の痛みに関して医師に伝えるべきポイントをまとめておきます。
腹痛のおさえるべき特徴
おさえておくべきポイントは以下の4つです。
クリニックを受診した際に医師に伝えられるとベストです。
①痛みの始まり方
②痛む場所
③痛みが始まったあとの経過
④歩いたときにお腹に響くか
1つずつ詳しくみていきます。
①痛みの始まり方
お腹の痛みが「突然」始まったのか、「徐々に」始まったのかです。
ここで言う"突然"の痛みは、「ピンポイントに〇〇時〇〇分」、「〇〇をしていた時です」、と細かく言えるくらいのことを言います。
「突然」始まった痛みには、お腹の太い血管の破裂(大動脈破裂)など、血管系の病気を疑うサインとなります。女性の場合だと子宮外妊娠破裂や卵巣出血など、いずれにしてもすぐに治療を行わなくてはいけない病気のサインとなりますので、要注意です。
逆に、胆嚢炎、胆管炎、虫垂炎(いわゆる盲腸)などいわゆるバイキン(細菌)感染などの炎症で起きる病気は"徐々に"痛くなることが多いです。
もちろん、痛みがゆっくり始まったから安心、というわけではなく、ゆっくり始まった病気の中でもすぐに治療が必要な病気はあります。あくまで、病気の診断に役に立つというレベルでご理解ください。
②痛む場所
「お腹の痛い場所がどこか」、ということになります。
漠然と痛い、どこを押してもそれなりに痛い、となると、腸が動くことによって起こる痛み(蠕動痛)や、胃腸炎、便秘など、あまり緊急性のない病気であることが多いです。
逆に、「お腹のある一点を押すとそこだけ痛い」という場合は注意が必要です。
なぜならその場所にある臓器に病気があるケースが多いからです。
場所ごとに病気の例を挙げておきます。
◆お腹の右上
:胆石症、胆嚢炎、胆管炎
◆みぞおち
:胃炎、胃潰瘍、胃癌、膵炎、虫垂炎、心筋梗塞
◆お腹の左上
:膵炎、胃潰瘍、胃炎
◆右の脇腹
:憩室炎、尿路結石
◆おへそのあたり
:虫垂炎(盲腸)、腸閉塞、膵炎
◆左の脇腹
:虚血性腸炎、憩室炎、尿路結石
◆お腹の右下
:虫垂炎、憩室炎、鼠径ヘルニア、クローン病
◆お腹の真ん中下の方
:過敏性腸症候群、膀胱炎、婦人科疾患
◆お腹の左下
:憩室炎、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎、尿路結石
また、「お腹全体がどこを押しても激痛で、歩けないくらい」といった場合は、腸閉塞や、お腹を覆っている膜の炎症(腹膜炎)などを疑います。これらの場合も緊急に治療が必要となります。
③痛みが始まったあとの経過
「ずっと痛みが続いている」のか、それとも「痛みが強くなったり、無くなったりの波がある」のか、ということです。
一般的には強い痛みが「ずっと」続いている方が緊急での治療が必要になる病気である可能性は高くなります。
④歩いたときにお腹に響くか
歩いたときにお腹に痛みが響く場合は、お腹を覆っている膜の炎症(腹膜炎)になっている可能性が高く、急ぎで治療する必要があります。
病院に行かれる際に、ここに書かれた項目をチェックしておくと、自分の症状を上手に医師に伝えることができ、診察もスムーズになります。
是非チェックしておきましょう。
玉寄クリニック
副院長・内科専門医 玉寄皓大