糖尿病の注射療法
糖尿病の治療薬には、飲み薬(経口薬)と、注射薬があります。ここでは、血糖値を下げる注射薬について説明致します。
注射薬の種類
糖尿病の注射薬は、大きく分けて2種類に分かれます。
①インスリン製剤
②GLP-1受容体作動薬
2つとも注射薬ですが、①のインスリン製剤はインスリンそのものを注射するのに対して、②のGLP-1受容体作動薬は自分の膵臓から出るインスリンをより出しやすくする注射薬で、比較的新しいお薬になります。
GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬
◆作用:インスリンの分泌を促し、血糖を上げるホルモン(グルカゴン)濃度を低下させることで血糖値を下げます。また、ご飯を食べたあとの消化のスピードが遅くなり、食欲をおさえる作用などがあります。
◆特徴:血糖値に応じて作用するため、膵臓への負担が少ない薬です。食欲を減らし体重を減らす作用もあります。単独の使用では低血糖リスクは少ないお薬です。週1回の注射製剤なら訪問看護師さんや御家族の方が打つこともでき、使いやすいお薬です。
例)
1日1回注射するタイプ:
ビクトーザ
1週間に1回注射するタイプ:
トルリシティ
オゼンピック
マンジャロ
インスリンについて
インスリン製剤は、大きく6種類に分けられます。
①超速効型インスリン製剤
②速効型インスリン製剤
③中間型インスリン製剤
④持効型インスリン製剤
⑤混合型インスリン製剤
⑥配合溶解型インスリン製剤
それぞれのタイプを見ていきましょう。
①超速効型インスリン製剤
◆作用:インスリンの追加分泌を補います。食後の血糖の上昇を抑えて食後高血糖を改善します。
◆注射タイミング:食事の直前
◆作用持続時間:3-5時間程度
◆作用が出るまでの時間:10-20分(早い)
例)
ノボラピッド
ヒューマログ(リスプロ)
アピドラ
②速効型インスリン製剤
◆作用:インスリンの追加分泌を補います。食後の血糖の上昇を抑えて食後高血糖を改善します。
◆注射タイミング:食事の30分前
◆作用持続時間:5-8時間程度
◆作用が出るまでの時間:30-60分
例)
ノボリン®️
ヒューマリン®️
③中間型インスリン製剤
◆作用:インスリンの基礎分泌を補います。空腹時血糖の上昇を抑えます。
◆注射タイミング:1日の内、決めたタイミングに打ちます。
◆作用持続時間:18-24時間程度
◆作用が出るまでの時間:3時間程度
◆その他:
・懸濁製剤(成分が沈殿している)のためよく振ってから使います。
・最近はあまり使われなくなってきています。
例)
ノボリンN
ヒューマリンN など
④持効型インスリン製剤
◆作用:インスリンの基礎分泌を補います。空腹時血糖の上昇を抑えます。
◆注射タイミング:1日の内、決めたタイミングに打ちます。
◆作用持続時間:1日程度
◆作用が出るまでの時間:1-2時間
例)
レベミル
ランタス
ランタスXR
グラルギン
トレシーバ
⑤混合型インスリン製剤
◆作用:インスリンの基礎分泌、追加分泌を両方補うお薬です。上で説明した超速効型(or速効型)インスリンと中間型インスリンを、決まった割合で混合してあります。
◆注射タイミング:指定された食事の前に注射します。混合されている追加分泌を補うインスリンの種類(超速効型または速効型)によって、食事の直前に注射するか、食事の30分前に注射するかが異なります。
◆作用持続時間:混合しているお薬によって異なります。
◆作用が出るまでの時間:混合しているお薬によって異なります。
◆その他:懸濁製剤(成分が沈殿している)のためよく振ってから使います。
例)
ノボラピッド30ミックス
ヒューマログ25ミックス
ヒューマリン3/7
など
⑥配合溶解型インスリン製剤
◆作用:インスリンの基礎分泌、追加分泌を同時に補うお薬です。持効型インスリン製剤であるトレシーバと、超速効型インスリン製剤であるノボラピッドを7:3の割合で含有した製剤です。
◆注射タイミング:決められた食事の直前に注射します。
◆作用持続時間:効果の発現は超速効型インスリン製剤(ノボラピッド)と、持効型インスリン製剤(トレシーバ)のそれぞれの作用持続時間と同じです。
◆作用が出るまでの時間:超速効型インスリン製剤と、持効型インスリン製剤のそれぞれの作用が出るまでの時間と同じです。
◆その他:他の混合製剤と異なりインスリンを振って混和する必要がなく、⑤の混合型に比べて使いやすくなっています。
例)
ライゾデグ
低血糖について
糖尿病の治療薬、特にインスリンを使用されている方は低血糖の症状、またその対応について知っておきましょう。
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