【内分泌代謝専門医が解説】脂質異常症の薬が怖い?スタチンにまつわる誤解と安心できる理由
「薬はちょっとこわい…」「一生飲むの?」そんな不安、ありませんか?
「コレステロールの薬を飲むべきと言われたけれど、副作用が心配」
「薬はできれば避けたい。でもサプリならなんとなく安心」
「一度飲み始めたら、もう一生やめられないの?」
実際の診察室でも、こうした不安の声を非常によく耳にします。この記事では、脂質異常症の治療薬に対するよくある誤解と、その裏にある確かな根拠を、内分泌代謝専門医の視点から丁寧に解説します。
「スタチンは危険」は本当?|週刊誌に煽られないために
「筋肉が溶ける」「ボケる」「肝臓に悪い」──そんな不安を煽る週刊誌の特集を目にしたことはありませんか?
しかし実際は、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)は30年以上使われてきた、非常に安全性の高い薬です。
- 世界中で何千万人が使用
- 心筋梗塞や脳梗塞のリスクを下げる効果が多数の臨床研究で証明
- 日本でも第一選択薬として長年使われ続けている
不安だけが先行しないよう、科学的な裏付けを持つ情報で冷静に判断しましょう。
治療を始める根拠|すべては「ガイドライン」に基づいています
私たち医師が薬の治療を勧めるときは、感覚や経験ではなく、科学的な診療ガイドラインに沿って判断しています。
たとえば、日本動脈硬化学会の『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』では、以下のようにLDLコレステロールの管理目標と薬の使用基準が明示されています
リスク分類 |
LDL-C管理目標 |
薬の検討タイミング |
リスク低 |
<160mg/dL |
原則は生活習慣改善 |
リスク中等度 |
<140mg/dL |
状況により薬物治療 |
リスク高 |
<120mg/dL |
多くの方に薬が推奨 |
冠動脈疾患あり(二次予防) |
<100mg/dL(<70も目標) |
原則、薬物治療 |
つまり、医師は「いつ、誰に、どの薬が必要か」を、ガイドラインという“エビデンスの宝庫”に基づいて判断しているのです。不必要に薬を出すことはありません。
「薬は危険で、サプリは安全」…その思い込み、実は逆です
「サプリなら安心」と思われがちですが、実は注意が必要です。
サプリメントには医薬品のような厳格な審査がない
- 医薬品:長年にわたる大規模臨床試験、副作用モニタリングが義務
- サプリ:食品扱いのため、効果や安全性の検証が十分とは限らない
実際、2024年には紅麹サプリが腎障害を引き起こした事件が報道され、社会問題となりました。自然由来でも安心とは限らず、"よく研究された医薬品の方がむしろ安全”という事実は、意外と知られていません。
体質的に高い方ほど「薬が守ってくれる」
「もともとコレステロールが高くなりやすい家系で…」
「若い頃からLDL-Cが高いけど自覚症状はない」
「痩せているけどずっとLDL-Cが高い」
こういった方にこそ、薬が本来の力を発揮します。遺伝的に高いLDL-Cは、放置すると30代・40代からでも心筋梗塞や脳梗塞のリスクが上がります。だからこそ、スタチンという薬が“血管を守る盾”となるのです。
「薬って一生飲むんですか?」という質問にもお答えします
多くの方が不安に感じるのがこの点です。
一生ではない方も多いです
- リスクが低い方は、生活習慣の改善がうまくいけば薬を減らす・中止することも可能です。
- 一時的に薬で数値を安定させ、その後生活習慣だけでキープというパターンもあります。
ただし、リスクが高い方は継続が大切
- 動脈硬化の既往がある方(心筋梗塞・脳梗塞など)
- FH(家族性高コレステロール血症)の方
- 血糖・血圧も悪いなど複数のリスクが重なる方
こうした方は、将来の命を守るために“継続”が必要となる場合が多いです。
- 大切なのは、「いつかやめたい」という希望を医師に伝えたうえで、現時点でのリスクを一緒に評価し、治療方針を一緒に考えることです。
副作用はあるがほとんどの人に起きない
スタチンの副作用としては
- 筋肉痛(1〜5%)
- 肝機能上昇(定期的な血液検査で監視)
- 横紋筋融解症(極めて稀)
などが知られています。
ですが、実際に安全に長く服用されている方が圧倒的に多く、世界中で標準治療として認められていることがその証拠です。
専門医からのメッセージ
薬を始めるかどうか、続けるかどうかは、「納得」が何よりも大事です。
- ガイドラインに基づいた診療
- 生活習慣の改善との両輪
- 薬の安全性と根拠ある判断
当院では、東大・聖路加で研鑽を積んだ糖尿病・内分泌代謝の専門医が毎日診療を行っており、脂質異常症の薬に対しても患者さんと丁寧に相談しながら判断します。薬が不安な方こそ、ぜひ一度ご相談ください。
中央区日本橋・人形町・水天宮前で脂質異常症の相談は玉寄クリニックへ
- 糖尿病内科・内分泌内科
- 近隣の日本橋・人形町・浜町・水天宮前・馬喰横山エリアだけでなく、東京23区や千葉県・埼玉県からも多数来院
- 専門医による丁寧で根拠ある治療
著者紹介
玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)
- 日本内科学会認定 内科専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
東大病院・聖路加国際病院で脂質異常症、糖尿病の専門診療に従事。現在は東京都中央区・日本橋で脂質異常症の早期発見・治療を通じて、将来の冠動脈疾患や脳卒中を防ぐ活動を行っています。