糖尿病治療で気をつけるべき「低血糖」とは?【原因・症状・対処法を糖尿病専門医が解説】
はじめに
糖尿病の治療を進めるうえで、血糖値の管理はとても重要です。その中でも「低血糖」は注意すべきポイントの一つです。今回は、糖尿病治療中の方が知っておくべき低血糖の原因や症状、正しい対処法について日本糖尿病学会糖尿病専門医がわかりやすく解説します。
低血糖とは?
低血糖とは、血糖値が正常範囲を下回った状態のことを指します。特に血糖値の急激な変動があると、体が対応しきれずにさまざまな症状が現れることがあります。
低血糖が起こりやすい6つのシチュエーション
糖尿病治療中の方は、以下のような場面で低血糖になりやすいので注意が必要です。
① インスリン注射や治療を変更したとき
インスリンや一部の糖尿病治療薬(スルホニル尿素薬など)は、血糖値を強力に下げる作用があります。治療を始めたばかりの時や、薬の種類・量を変更した際には、予想以上に血糖値が下がることがあるため注意が必要です。
② 食事のタイミングが遅れたとき
インスリン注射や糖尿病治療薬を服用した後に食事が遅れると、血糖値が急激に低下しやすくなります。
③ 体調不良などで食事量が減ったとき
治療薬の効果は通常の食事量を前提に設定されているため、食事量が減ると血糖が下がりすぎることがあります。
④ いつもより激しい運動をしたとき
運動は血糖値を下げる効果があるため、特に普段より強度の高い運動をした場合、低血糖のリスクが高まります。
⑤ 飲酒後の翌朝
アルコールは肝臓の糖新生(糖を作り出す働き)を抑制するため、飲酒後の翌朝などに低血糖が起こりやすくなります。
⑥ 入浴
入浴すると血流が良くなり、代謝が促進されることで血糖値が下がることがあります。特に長時間の入浴や熱いお風呂に入る場合は注意が必要です。
低血糖の症状とは?
低血糖になると、以下のような症状が現れます。
軽度の低血糖症状
・動悸(ドキドキする)
・冷や汗をかく
・手の震え
・強い空腹感
中等度の低血糖症状
・めまい、ふらつき
・頭痛
・視界がかすむ
重度の低血糖症状(意識障害)
・強い眠気
・意識がもうろうとする
・けいれん
「無自覚性低血糖」に注意!
低血糖を繰り返している方や高齢の方は、低血糖の症状が出にくくなることがあります。無自覚のまま意識を失うケースもあるため、注意が必要です。
低血糖の対処法(応急処置)
もし「低血糖かな?」と思ったら、すぐに以下の対処を行いましょう。
✔︎ ブドウ糖 10g摂取(最も速く血糖値を上げる)
✔︎ お砂糖 20g摂取(ブドウ糖がない場合)
✔︎ 糖分を含むジュース150ml以上飲む(スポーツドリンクなど)
⚠αグルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、セイブルなど)を服用中の方は、必ずブドウ糖を補給してください。
意識が低下している場合や、症状が改善しない場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
低血糖を防ぐためには?
・血糖値の変動を把握することが大切!
低血糖は突然起こるものではなく、食事・運動・薬の影響を受けながら血糖値が変動することで発生します。そのため、自分の血糖値の動きを把握することが、低血糖予防のカギとなります。
✔︎ 血糖値を定期的にモニタリングし、低血糖を未然に防ぐ
✔︎ 持続血糖モニタリングの活用が有効
当院では、最新の血糖モニタリング機器を用いた「血糖モニタリング外来」を実施しています。
24時間血糖を測ることのできる機械を2週間装着することで、血糖変動のパターンや低血糖がいつ起こるかが一目瞭然でわかります。
血糖変動が気になる方や、低血糖の不安がある方は、糖尿病がある方でもない方でも、ぜひ一度ご検討ください。
まとめ
低血糖を防ぐためには、日常生活の見直しと血糖変動の確認が重要です。
✔︎ 「これは低血糖の症状?」と気になる方
✔︎ 「食後や運動後の血糖変動を知りたい」方
✔︎ 「低血糖が頻繁に起こるが原因が分からない」方
このようなお悩みをお持ちの方は、当院の「血糖モニタリング外来」へお気軽にご相談ください。
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玉寄クリニック
糖尿病専門医 玉寄皓大