糖尿病治療の「オーダーメイド」って何?あなたに最適な治療とは【糖尿病専門医が解説】
はじめに
糖尿病は「血糖値が高い病気」というイメージがありますが、実は患者さんお一人おひとりで原因や進行度、治療の最適解が異なる 病気です。そのため、画一的な治療ではなく、それぞれの患者さんに合った 「オーダーメイド治療」を行うことが、健康を守る上でとても重要になります。では、「オーダーメイド治療」とは具体的にどんなものなのでしょうか?日本糖尿病学会糖尿病専門医がわかりやすく解説いたします。
糖尿病治療はなぜ「オーダーメイド」が必要なのか?
「糖尿病」と一口に言っても、その原因や身体の状態は人それぞれ異なります。たとえば原因だけでタイプを大まかに分けても、
- 遺伝要素に食べすぎ・運動不足が加わり発症したタイプ
- 痩せているのに血糖値が高いタイプ
- 遺伝的にインスリンの出が悪いタイプ
- 他の病気やお薬の副作用で糖尿病になったタイプ
- 自己免疫異常などで発症するタイプ(1型糖尿病)
このように様々なタイプに分けられ、同じ糖尿病でもタイプが違えば適切な治療も変わってきます。
また、生活習慣、年齢、合併症の有無、仕事や家庭環境などによっても、最適な治療は変わります。
例えば、同じ「HbA1c 8.0%」の患者さんでも、
- 40代で仕事が忙しく、外食が多い人
- 70代で少食なのに血糖値が高い人
- インスリンがほとんど出ない1型糖尿病の人
では、治療のアプローチが全く異なります。
40代の方には 生活習慣の見直し+薬の調整、70代の方には 低血糖を防ぐための食事管理+適切な薬の選択、1型糖尿病の人にはインスリン療法が必須+血糖をこまめに調整する必要があります。
こうした 「その人に合った最適な治療」 を考えるのが、オーダーメイド治療の本質です。
オーダーメイド治療の具体例
① 食事・運動療法のカスタマイズ
糖尿病治療の基本は、食事と運動ですが、画一的な「カロリー制限」や「運動を増やす」だけではうまくいきません。
例えば、こんな工夫が必要です。
【ケース1】仕事で昼食が不規則な40代男性
→ 朝食・夕食を重視した食事計画に変更+血糖値の急上昇を抑える食べ方の指導
【ケース2】膝が悪くて運動ができない70代女性
→ 激しい運動ではなく、短時間で効果のある「食後の軽い散歩」や「椅子に座ったままできる運動」を提案
こうした 「その人の生活に合った無理のない改善策」 を一緒に考えることが、オーダーメイド治療の第一歩です。
② 薬の選び方も「オーダーメイド」
糖尿病の薬には、飲み薬だけでも10種類以上あり、さらに注射薬も複数あります。それぞれ作用が違い、副作用も異なります。
例えば、
- 肥満が気になる人には、食欲を抑える「GLP-1受容体作動薬」や「SGLT2阻害薬」を選択し減量を図る
- 低血糖が心配な高齢者には、血糖を下げすぎない「DPP-4阻害薬」を選択
- 腎機能が悪い人には、腎臓に負担の少ない薬かつ腎臓を保護する薬を選択
といったように、その人に最適な薬を慎重に選びます。
「とりあえず血糖値を下げるために強い薬を使う」というのではなく、患者さんの体質や病状、ライフスタイルに合ったお薬を選ぶことが、長期的な健康を守る鍵になります。
③ インスリンも「その人に合わせた設計」
「インスリンを使う=もう治らない」と誤解されがちですが、実際には インスリンを上手に使うことで、より自由な生活を送ることができるケースも多くあります。
例えば、
- どうしても食事が不規則な人には「超速効型インスリン」を食事時に使用
- 膵臓からのインスリン分泌が極端に少ない人には、24時間安定する「持効型インスリン」を導入
といったように、患者さんの病状・生活スタイルに合わせたインスリンの使い方を提案します。
「インスリン=最後の手段」では全くなく、正しく使えばQOL(生活の質)を向上させる強力な味方になるということを知っていただきたいです。
オーダーメイド治療ができる医師を選ぶことが重要
糖尿病治療は、「薬を出して終わり」「悪かったら闇雲に薬を増やすだけ」ではありません。患者さんの病状や生活背景を考慮し、本当に最適な治療を一緒に考え、長く寄り添っていくことが大切です。
オーダーメイド治療を実践するために、当院では
- 患者さん一人ひとりの生活習慣・体質を丁寧にヒアリング
- 最新の糖尿病治療を熟知した「糖尿病専門医」が診療
- 薬に頼るだけでなく、生活習慣の改善も一緒に考える
ことを大切にしています。
最後に
「どんな治療が自分に合っているのかわからない」
「今の治療が本当にベストなのか不安」
そんな方は、一度ご相談ください。当院には日本糖尿病学会認定糖尿病専門医が2名在籍しております。あなたに合った最適な治療を一緒に考えますので、お気軽にご相談ください。