【コレステロールは薬なしで下げられるか?専門医が実践する生活習慣のコツ5選】|内分泌代謝専門医が解説
はじめに
こんにちは。東京都中央区・日本橋で糖尿病や脂質異常症を専門に診療している内分泌代謝専門医、玉寄皓大です。
「コレステロールが高いと言われたけど、薬にはまだ頼りたくない」
そんなご相談を、外来で多くいただきます。
もちろん、お薬が必要になるケースもありますが、生活習慣の見直しだけで改善できる脂質異常症も少なくありません。
本記事では、LDLコレステロールや中性脂肪を改善するための生活習慣のコツを5つにまとめて、実例も交えながらわかりやすく解説します。
目次
- 薬なしでも改善できる脂質異常症は多い
- 専門医が実践する生活習慣のコツ5選
- すぐに薬が必要なケースとは?
- 代謝専門医として伝えたいこと:焦らず、でも放置せず
1. 薬なしでも改善できる脂質異常症は多い
脂質異常症と診断されたからといって、すぐに薬を始めなければならないわけではありません。特に以下のようなケースでは、生活習慣の改善で十分に数値を整えられる可能性があります。
- LDLコレステロールが140〜160 mg/dL前後
- 中性脂肪が150〜300 mg/dL程度
- HDLコレステロールがやや低め(35〜40 mg/dL)
こうした方が、半年〜1年の取り組みで数値が正常化した例は珍しくありません。
2. 専門医が実践する生活習慣のコツ5選
(1) 朝食に“食物繊維”を加える
- 食物繊維(特に水溶性)は、腸内でコレステロールの吸収を抑える効果があります。
- 具体例:オートミール、もち麦、海藻類、納豆、きのこ類
- 特に「白米だけ」の朝食から、「白米+納豆+野菜スープ」などにするだけでも効果があります。
(2) 魚を週に2〜3回しっかり食べる
- 青魚(サバ、サンマ、イワシなど)に多く含まれるEPA・DHAは、中性脂肪を下げる作用があります。
- 「週に2〜3回」を意識して取り入れることで、自然に脂の質が整っていきます。
(3) 揚げ物と甘い飲み物を「意識的に減らす」
- 揚げ物は飽和脂肪酸が多く、LDLコレステロールを上げやすい食品です。
- 清涼飲料水・フルーツジュースも中性脂肪の急上昇に直結します。
- まずは「平日は控える」など、ルールを設けてみることから始めましょう。
(4) 1日20〜30分の“歩く時間”を確保する
- 有酸素運動は、HDL(善玉)を増やし、中性脂肪を減らす作用があります。
- 速度は“少し息が上がる程度”が理想。
- 「電車の一駅分を歩く」「夜にラジオを聞きながら歩く」など、日常生活に取り込む工夫が鍵です。
(5) “体重を5%落とす”だけで大きな変化
- 体重が70kgの人なら、約3-5kgの減量で、LDLや中性脂肪が大幅に改善する可能性があります。
- 無理なダイエットは不要ですが、「1〜2ヶ月で1kg減」を目標にすると継続しやすくなります。
3. すぐに薬が必要なケースとは?
以下に該当するような方は、生活習慣改善だけでなく薬による治療を速やかに検討すべきケースです。
- LDLコレステロールが180mg/dL以上
- 糖尿病や心疾患の既往がある
- 家族に心筋梗塞の若年発症者がいる
- すでに冠動脈にプラークがあると診断された
こうした場合、スタチン系などのコレステロールを下げる治療薬は命を守るための“手段”です。必要なときに正しく使うことが大切です。
4. 代謝専門医としてお伝えしたいこと:焦らず、でも放置せず
脂質異常症は、すぐに症状が出る病気ではありません。だからこそ、無理せず、焦らず、でも放置せず。
“向き合い方を選ぶ”ことが大切です。
私自身も、外来でまずお伝えするのは「一緒に取り組んでいきましょう」という姿勢です。数字は“変えられる”ものであり、その選択肢をお伝えするのが専門医の役目だと考えています。
著者紹介:
玉寄 皓大(たまよせ あきひろ)
- 日本内科学会認定 内科専門医
- 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
- 日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
東大病院・聖路加国際病院で内分泌・代謝疾患の診療に従事。現在は東京都中央区日本橋で生活習慣病専門外来を担当。「数字ではなく“納得できる説明”を提供する医療」をモットーに、脂質異常症を丁寧に啓蒙することをライフワークとしている。