糖尿病の運動療法とは?【糖尿病専門医がわかりやすく解説】
運動療法
「糖尿病の治療」と聞くと、多くの方は食事やお薬のことを思い浮かべるかもしれません。しかし、実は「運動」も大事な治療のひとつです。運動をすることで血糖値が下がりやすくなり、糖尿病が悪化するのを防ぐことができます。しかし、「どんな運動をすればいいの?」と思う方も多いですよね。今回は、糖尿病の方におすすめの運動と、その効果や注意点を日本糖尿病学会糖尿病専門医がわかりやすく解説いたします。
そもそもなぜ運動が糖尿病にいいのか
運動には、糖尿病の改善に役立つ大きなメリットが3つあります。
① 血糖値を下げ、安定させる
体を動かすと、筋肉がエネルギーを使うため、血液の中の「糖」が消費されて血糖値が下がります。特に食後に軽い運動をすると、食事で上がった血糖値を下げる効果が期待できます。また、運動を続けることで、体が糖をスムーズに使えるようになり、血糖値が安定しやすくなります。
② 体重を減らし、糖尿病を悪化させにくくする
お腹まわりに脂肪がたまると、脂肪がインスリンの血糖値を下げる働きを邪魔し、糖尿病が進みやすくなります。しかし、運動を習慣にすれば、脂肪が減り、インスリンがしっかり効きやすくなります。特に「ウォーキング」などの有酸素運動は、内臓脂肪を減らすのに効果的です。
③ 糖尿病の合併症を防ぐ
糖尿病は、放置すると心臓病や脳卒中などの病気につながることがあります。運動をすると、血の流れが良くなり、血圧やコレステロールのバランスも整いやすくなるため、こうした合併症の予防になります。
どんな運動をすればいいの?
糖尿病の方におすすめなのは、大きく分けて ① 体を動かす運動(有酸素運動)と、②筋肉をつける運動(筋トレ)です。
① 体を動かす運動(有酸素運動)
効果:血糖値を下げる、脂肪を減らす、心臓や血管を健康にする
おすすめの運動と目安
・ウォーキング(早歩き)
:1日30分以上(10分×3回でもOK)
・自転車こぎ:30分-1時間
・水中ウォーキング:関節に負担をかけずに運動できる(腰や膝など関節の病気がある方におすすめ)
ポイント
• 食後1時間後くらいに行うと、食事で上がった血糖値を下げるのに効果的
• 毎日少しずつ続けるのが大事(1日30分が難しければ、10分×3回でもOK)
• 無理なくできるペースで行う(息が弾むくらいが目安)
② 筋肉をつける運動(筋トレ)
効果:体の中で糖を使う力を高める、基礎代謝を上げる
おすすめの運動と目安
• スクワット(椅子に座るイメージでゆっくりしゃがむ):10回×3セット
• かかと上げ運動(つま先立ちをして、ゆっくり戻す):20回×3セット
• ペットボトル筋トレ(500ml-1Lのペットボトルを持って腕を曲げ伸ばし):10回×3セット
ポイント
• 週に2-3回行うのが理想
• 重すぎる負荷をかけずに、無理のない範囲で続ける
• 有酸素運動と組み合わせるとより効果的
運動するときの注意点
① 低血糖に注意
糖尿病の薬やインスリンを使っている方は、運動すると血糖値が下がりすぎて「低血糖」になることがあります。
低血糖を防ぐためのポイント
• 運動前に血糖値をチェックする
• 運動する前に軽く何か食べる(血糖値が100mg/dL以下のとき)
• ブドウ糖や飴を持ち歩き、低血糖の症状(めまい・冷や汗・ふらつき)が出たらすぐに補給
② 激しすぎる運動は実は逆効果
「運動は頑張れば頑張るほどいい」と思うかもしれませんが、糖尿病の方にとっては逆効果になることもあります。
注意したいこと
• 息が切れるほどの激しい運動は控える(軽く息が弾むくらいがベスト)
• 長時間やりすぎない(1回30〜60分が目安)
③ 合併症がある方は運動の種類に注意
糖尿病の合併症(足のしびれ、目の病気、腎臓の病気など)がある場合は、運動のやり方に気をつける必要があります。
• 足にしびれがある方
→ 転びにくい運動(座ってできる運動や水中ウォーキング)を選ぶ
• 目に病気がある方
→ 重いものを持つなど力む運動は避けましょう。また運動前に医師に相談しましょう。
• 腎臓が悪い方
→ 無理な運動は腎臓に負担をかけるため、医師と相談してからにしましょう。
まとめ
運動は、糖尿病の治療の1つとしてとても大切です。でも、「いきなりハードな運動をしなければ」と思う必要はありません。
- 食後に少し歩く習慣をつける
- スクワットなどの簡単な筋トレを取り入れる
- 週150分以上(1日30分×3日)の運動を目指す
このように、無理なく続けることが最も大切です。糖尿病の治療や運動のやり方に不安がある方は、糖尿病専門医のいる当院までお気軽にご相談ください。一緒に健康な生活を目指しましょう。
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玉寄クリニック
糖尿病専門医(副院長) 玉寄皓大