【東京都で麻疹発生】麻疹抗体検査【感染リスクをチェック】
東京都内で麻疹患者の報告
東京都は2024年3月11日、都内に滞在していた大阪市の20代女性が、麻疹(はしか)に感染していたと発表しました。各メディアから連日報道がありますが、そもそも麻疹が一体どのような病気で、何故ここまで騒がれているのか疑問に思われる方も多いと思います。その疑問についても解消できるように、麻疹について解説していきます。
麻疹について
麻疹は麻疹ウイルスの感染によって起こる感染症です。日本国内での発生は予防接種の普及により激減し、現在は海外から入ってくるものが中心となっています。
麻疹の感染経路
空気中のウイルスを吸い込むことによる「空気感染」、咳やくしゃみなどのしぶきを吸い込む「飛沫感染」、「接触感染」等、さまざまな感染経路で感染します。
麻疹の症状
ウイルスに感染するとおよそ10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れ、2~3日熱が続いたあと、39℃以上の高熱と全身に赤い発疹が出るのが特徴です。
麻疹の何が怖いのか
麻疹が恐れられる理由は「感染力の強さ」と「合併症」にあります。感染力の強さについては前述した通り、「空気感染」を起こすため、同じ空間にいただけで感染することがあります。そのため、今回のように麻疹の感染報告があると、その感染者がどこの飛行機や新幹線を使ったか、どこのお店でご飯を食べたか、といった細かい情報まで公開されるのです。合併症については、麻疹全体の約30%に起こると言われており、その約半数が肺炎です。また、頻度は低いものの脳炎の合併例もあり、この二つの合併症は麻疹による二大死因となり、注意が必要です。また妊娠中の麻疹感染で流産・早産・死産を起こす確率が上がることも知られています。
麻疹の治療
特効薬はなく、対症療法になります。
(※インフルエンザに対する抗インフルエンザ薬、溶連菌に対する抗生剤のように特別に効く薬が存在しない点も麻疹の厄介な特徴です)
麻疹に対する免疫を獲得するには
麻疹に対する免疫を獲得する方法は以下の2パターンです。
①麻疹にかかったことがある
②麻疹のワクチン接種を2回受けている
この2パターンしか麻疹に対する免疫を獲得することは出来ません。②については一般的に生涯に2回ワクチンを接種できていれば麻疹にほぼ感染することはないと言われています。いつ接種したか覚えていない方は、「母子手帳」をまず確認しましょう。「母子手帳」にはワクチン接種歴が記載されています。ここで麻疹のワクチンを2回接種できていることが確認できればまずは一安心です。(ただし、ワクチンの効果は30年程度で下がることがあるため30-40代くらいの世代の方は注意が必要です)
そして、実際にいま現在免疫を獲得しているかどうか調べられるのが、これから述べる「抗体検査」となります。
麻疹抗体検査とは
麻疹ウイルスに対するIgG抗体の値(=免疫力)を調べる検査です。この検査によって過去の感染の有無や、麻疹ウイルスに免疫を持っているかどうかが分かります。検査方法は採血となります。
抗体検査が勧められる方について
以下に当てはまる人は、検査を受けることが推奨されます。
- 過去の麻疹ウイルスワクチン接種歴が不明な方
- 1977(昭和52)年以前に生まれた方(麻疹ウイルスワクチンは、1977年までは任意接種だったため、この年代の接種歴は人によって様々です)
- 過去に麻疹にかかったことが明らかでない方
- 妊娠を希望する方や妊娠中の方
麻疹抗体検査の実際の見方
麻疹抗体 | (-) | (±)-(+) | (+) |
IgG(EIA法) | 2.0以下 | 2.0-15.9 | 16.0以上 |
①IgG濃度16.0以上/抗体陽性(+)
→「充分な免疫あり」
②IgG濃度2.0-15.9/抗体陽性(±-+)
→抗体は陽性だが「充分な免疫なし」
③IgG濃度2.0未満/抗体陰性(-)
→抗体は陰性で「充分な免疫なし」
つまり、検査結果でIgGが2.0未満で抗体陰性だった方、抗体陽性でも16.0未満だった方については、“麻疹ウイルスに対して充分な免疫がない”という判定になります。
当院での麻疹抗体検査
当院で麻疹の抗体検査が可能です。費用は5,500円(税込)となります。ご希望の方は当院へご相談ください。
※結果が出るのに1週間程度かかります
最後に
麻疹ワクチンは全国的に供給が不足しており、現在当院でも接種が困難な状況です。各種報道においても、ワクチンが品薄のため、まず抗体検査で抗体価の確認を行うことを推奨しています。ご希望の方は当院で抗体検査が可能ですのでご相談ください。この記事が皆様のご参考になれば幸いです。
東京都中央区日本橋人形町
玉寄クリニック
副院長(兼 聖路加国際病院内分泌代謝科)
玉寄 皓大